首都圏に住んでいると
都心のホテルを利用することはあっても
なかなか泊まる機会は少ない。
しかし、一度この"日常の中の非日常"を味わってしまうと
海外の旅などよりはるかに刺激的であることがわかる。

都心のホテルに泊まる楽しみを教えられたのは、都内の一流ホテルで副社長を務めていたホテルマンからだった。大型バイクで"世界の走り方"を心得ていた豪快な方だったので、もちろんご自分のホテルを売り込むためなどではない。「夫婦で一度、都心の高級ホテルに泊まってごらん。世界が変わるから……」。半信半疑で試しているうちに、これほど"劇的"な非日常はないことを知った。

都内に家がありながら都心のホテルに泊まるのだから、これほどの贅沢はない。この贅沢さがすでに"劇的"である。その上、帰ることを気にせずに食事やワイン、スパ、エステ、プールなどを楽しみ、翌日は"歩いて"職場へ向かったり買い物に出かけたりできるのだから、気分はすっかりセレブリティである。面倒な旅行に出かけるくらいなら、都心のホテルでゆったり過ごす方がよほど爽快だ。夫婦仲がよくなることは、言うまでもない。「世界が変わる……」とは、こういうことか……。

そこでまずは、抜群の存在感が気になる「ザ・ペニンシュラ東京」である。言わずと知れた香港を本拠とする高級ホテルグループだが、このホテルのロケーションへのこだわりは尋常ではない。Salisbury Roadにある「ザ・ペニンシュラ香港」は1928年の開業。九龍半島を扇に見立てると、その要(かなめ)の位置にある。ホテルのロビーは常に世界各国からの旅行者と地元の人々で賑わい、「ホテルは第一にロケーション」というのは創業時からの信条のようだ。

その典型が「ザ・ペニンシュラニューヨーク」。住所は何と700 Fifth Avenue at 55th Street。5番街と55丁目の角にあり、いわゆる"Prestigious Address(一流の住所)"である。また、ヨーロッパで初めてとなる2013年春開業予定の「ザ・ペニンシュラパリ」も、立地はクレベール通り19番地と、凱旋門やシャンゼリ通りのすぐ近く。ペニンシュラ・グループは、ロケーションがよくなければ決して出て行こうとしないのである。
「ザ・ペニンシュラ東京」の場合も皇居外苑に面していて、丸の内と銀座のゲートウェイに当たる絶好のロケーション。マルコム・トンプソン総支配人が「これ以上は望めない最高の立地」と言うだけあって、誠に申し分がない。

「ザ・ペニンシュラ」は「ロールス・ロイスで送迎するホテル」として知られているだけに、一般には少々「敷居の高いホテル」と思われるかもしれない。しかし、決してそんなことはない。高級でありながら「親しみやすく、温かなもてなし」の感じられるホテルである。中には高級であることを「冷たくあしらうこと」と勘違いしているブランドショップもないわけではないが、「ザ・ペニンシュラ」の対応はどこまでもフレンドリーかつアットホームだ。

「それは、ホテルのポリシーのせいかもしれませんね」とトンプソン総支配人。「ペニンシュラはすべてのお客さまに快適にお過ごしいただきたいと考えています。決して一部のお客さまだけを対象とした Exclusive(排他的)なホテルではないのです」。したがって「ホテルを通り抜けていただくだけでも、あるいはトイレをご利用になるだけでも大歓迎です」と笑顔をくずさない。「高級でありながら親しみやすい雰囲気」をつくることは、自信がなければとてもできることではない。

このホテルの心地よさを支えているのは、代々のオーナー一族に受け継がれている「家族経営」の良さかもしれない。「ザ・ペニンシュラ」グループを経営する「香港上海ホテルズ社」の現会長はSir Michael Kadoorie氏。カドゥーリー家は、どんな経営状況に置かれてもスタッフの雇用を守ることを大切にする。「ザ・ペニンシュラ香港」には数世代にわたって働き続けている家族もいるそうで、勤続年数の長いスタッフが多く、安定したサービスの維持がこのホテルの大きな魅力になっている。2007年9月1日開業の「ザ・ペニンシュラ東京」も、開業時からのスタッフがその伝統を受け継いでいる。

ペニンシュラのもう一つの特徴は、オーナー・マネージメントを心がけていることだろう。現在、香港をはじめ北京、上海、ニューヨーク、シカゴなど世界の9都市で「ザ・ペニンシュラ」を展開しているが、いずれも 100%か、もしくはある程度の所有権を維持している。つまり「わが家」を自らコントロールしているのである。「ザ・ペニンシュラ東京」の場合も、土地 と建物は"丸の内の大家さん"三菱地所が所有しているが、50年の長期賃貸契約で、内装に関してはペニンシュラの自前である。ペニンシュラのこだわりは、こうしたところにもにじみ出ている。

ところで、首都圏に住む人にとって「ザ・ペニンシュラ東京」の魅力とは何だろうか。快適さやラグジュアリーな雰囲気もさることながら「このホテルから眺める景観は、まさに感動ものでしょう」とトンプソン総支配人。「東京にお住まいの方でも、このホテルからの眺めをご存知の方は、それほど多くはないでしょう」と胸を張る通り、このホテルから眺められる景色は"絶景"と言ってよい。緑濃い朝の皇居外苑、丸の内から銀座にかけての昼のにぎわい、そしてしっとりとした潤いのある夕景は、このホテルならではのもの。泊まってみることで、東京がさらに好きになるに違いない。
(Text/飯田 徹)
1950年英国生まれ。ロンドン大学卒。1976年にハイアット インターナショナル グループ入社。30年にわたって同社でキャリアを積み、「パークハイアット東京」で約7年間、総支配人を務める。その在職中に2004年のアカデミー脚本賞を受賞したソフィア・コッポラ監督・脚本の映画「Lost in Translation」の舞台として協力、「パークハイアット東京」の名を世界に知らしめた。2006年6月「ザ・ペニンシュラ東京」総支配人に就任、準備段階から運営に携わり、オープンを成功裡に導いた。「ホテルの運営はチーム力。スタッフがそれぞれの力を合わせることでブランドはますます輝きを増す」という通り、人を育てることには定評がある。「ザ・ペニンシュラ東京で最も気に入っている場所はどこでしょうか?」という問いに、いたずらっぽい笑顔で、「中国料理レストラン ヘイフンテラスの奥にある二人掛けのセミプライベートシート」と、こっそり教えてくれた。笑顔が魅力的な"ジェントルマン"である。
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| 料金: | 1部屋2名様 33,500円(消費税・サービス料込み/東京都宿泊税別途) |
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| 期間: | 2011年5月1日(日)~9月16日(金) | ||||||
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Tel. 0120-71-2888
http://www.peninsula.com/Tokyo/jp/default.aspx