自らほれ込んだ陶芸作家と共に、
心豊かになるイベントを開催する「うつわ謙心」。
"和の文化"をテーマに集まる
30代の元気な若手作家たちの活動を紹介しよう。

東京・青山に、わずか3.5坪の小さな焼き物の店「うつわ謙心」がある。その小ささがかえって目を惹く。3人も入ればいっぱいになってしまう店内にはジャズが流れ、足元にはほんのりランプの灯。ちょっとした隠れ家のような控えめなたたずまいに、そこはかとなくオーナーの美意識がただよう。

オーナーの佐藤謙心さんはかつて、料理の撮影を専門とする写真家や出版社に器をレンタルする会社にいたとか。そこで多くの陶芸家と出会い、自分とほぼ同じ年齢の若手作家が創作に励む姿を目の当たりにして、それを何とか世間に広められないかと考えて独立したのだという。2009年4月17日のこと。今年、開店2周年を迎えたばかりの若いお店だ。

「うつわ謙心」で開かれるイベントは一風、変わっている。お客さんと陶芸家だけでなく、お寿司屋さん、和菓子屋さん、お茶の先生など、それぞれ焼き物とかかわりのある人たちが集まり、実際に作家ものの器を使って鮨や菓子、お茶を楽しむ。それも、30代前半の若手ばかりだ。いずれも、器は"使ってこそ生きる"ことを心得ている気鋭の陶芸作家、寿司や菓子などの食の職人、お茶や華道、水引の研究者たちだ。

佐藤謙心さんはお店をオープンするに当たって、これはという陶芸作家の工房を一軒一軒、訪ね歩いたそうだ。ところが、いずれの作家もご自分の制作環境を大切にされていて、人里離れた山奥や交通の不便なところばかり。これではとても気軽に訪れることなどできない。特に、制作中は訪問もはばかられるので、作家と使い手はなかなか懇意になることができない。そこで「作家の人となりを知ることができれば、もっと器を好きになれるのに」と考えた佐藤さんは、作り手と使い手が一緒に楽しめる場をつくることに取り組んだ。

その一つが2011年4月14日(木)~4月19日(火)に東京都文京区水道の「酢飯屋ギャラリー」で開かれる「和菓子とうつわ展」。「wagashi asobi」のグループが制作する創作和菓子を中心に、陶芸家の安達 健氏をはじめ伊藤剛俊氏、鈴木陽子さん、それに彫金作家の田巻奈菜さん、木工作家の富井貴志氏、漆芸家の蜂谷隆之氏、水引のYUI Lab.などの作品がジャンルを越えてコラボレートする。実は会場を提供している「酢飯屋」のオーナーシェフ、岡田大介さん自身も30代で、大の器好き。佐藤さんと一緒に度々イベントを開催している。

ところで気になるのは、いずれのクリエイターも30歳前後の若手ということ。新進気鋭の作家が多いので、気心の知れた身近な若者たちが自然に集まったのかと思ったが、実はそうではなかった。「最初は有名な先生にもお願いしていたのですが、腰が重くて、とても協力してくれそうにない。そこで、あちこち声を掛けているうちに"面白そうだから"ということで多くの若い作家さんが駆けつけてくれるようになったのです」と佐藤さん。その結果、気がついたらなぜか同世代の若手ばかりになっていたようで、決して大家を敬遠しているわけではなさそうだ。

それと、経済的な理由もある。佐藤さんには、たとえ作家ものであっても「器は普段使いにしてもらいたい」というビジョンがある。それには、床の間に飾っておくような高価のものではなく、手頃な価格で気軽に求められるものでなくてはならない。無名でも優れた若手の作家はたくさんおり、だからといって格別、高価なわけではない。「こんなに素晴らしい作品が、こんな値段で手に入る」ということを、使い手にも分かってほしいので、せっせとイベントを企画し、作り手と結びつけているのだという。

「うつわ謙心」が売ろうとしているのは、作家の名前や産地のブランドなどではない。器そのものだ。それも、料理やお酒、お茶、お菓子などを盛ってはじめていきいき輝くもの。心うきうきと、使うことが楽しくなるもの。料理や総菜を盛りつけて、家族やお客さんにお出しすることを考えただけでわくわくしてくるようなもの。そのためには、ありきたりの退屈な器ではときめかないではないか。
わずか3.5坪とはいえ、「うつわ謙心」には暮しを楽しもうとする使い手を待つ、作り手の意欲とまっすぐな心意気が感じられる。
(Text/宮崎 陽子)
4月14日(木)~19日(火)の「和菓子とうつわ展」に参加しているアーティスト
※在廊日には各作家が会場で応対いたします。

「wagashi asobi × YUI Lab.」
~和菓子づくりと水引結びのワークショップ+お寿司付き~
4/16(土)と4/17(日)の2日間
| 参加費:¥5,500 予約制限定16名 |
| 昼の部:12:00~14:00 |
| 夜の部:17:00~19:00 |
| 会場:酢飯屋 |
| ご持参いただくもの:エプロン |

Tel. 03-6427-9282 11:00〜20:00(定休日:水曜)
http://www.utsuwa-kenshin.com/

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