天空の地、チベット。それは、はるか彼方の神秘の世界……。
その「聖地チベット」から、日本の密教芸術とは異なる
もう一つの密教美術がやってきた。



聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝

会 期:~2010年1月11日(月・祝)
会 場:上野の森美術館 http://www.seichi-tibet.jp/
観覧料:当日/一般1,400円、高大生1,200円、小中生800円、未就学児は無料
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 精緻を極めるチベット医学

 数年前に中国の青海省西寧市を訪れたことがある。中国では西洋医学と中医学のほかに「蔵医学(チベット医学)」が正規の医療として認められており、西寧市には「薬浴」で有名な「青海省蔵医院」がある。ここの「薬浴センター」のリウマチの治癒率は70%以上にも達しているとかで、高い治癒率を誇っている。その治療の仕組みに関心があったので訪ねてみたのである。
 「青海省蔵医院」に付属する「薬草博物館」で目にした標本は、植物だけでなく鉱物や動物などのものもあり、数千点にも及んでいた。見学のために連れていっていただいた薬草を摘むための「聖域(部外者立ち入り禁止区域)」は、正確な広さがわからないほど広大で、同じ薬草でも、朝と夕、北斜面と南斜面など、摘まれた時期や場所によって薬効が異なるという。チベット医学の基礎になっている「四部医典」を基にした薬草体系は、年齢や出身地、病態などでそれぞれ処方が異なり、実に精緻をきわめていた。


 チベット医学を絵図で教える「タンカ」

 今回の展覧会でも数多く出展されているが、チベット医学の仕組みを絵図で表した「タンカ」は、チベット独特の医学書である。チベット密教の教えと一体になっており、輪廻転生で始まる人の誕生の仕組みから、日常生活の細部について記した養生訓、そして老いて死に至るまでの道筋までが克明に描かれている。
 そのチベット密教のエッセンスとも言うべき秘宝の数々が、わが国にやってきた。


 高度な密教芸術

 わが国にも空海のもたらした真言密教や最澄の天台密教があるが、チベットの密教は土着の宗教とインドのヒンズー教の影響を色濃く受けた後期密教が融合したもので、同じ仏教でもかなり様子が違う。特に、神仏の表現方法が大きく異なっており、かなりとまどう。
 しかし、ここに展示されている数々の至宝を見れば、その表現の緻密なこと、技術水準の高いこと、美意識の強烈なことは歴然としている。チベット密教は人々の暮らしの中に強固に根付いており、周辺の国々にまで大きな影響を及ぼしている。ちなみに、チベット族の住むエリアは現在のチベット自治区だけでなく、近隣の青海省、四川省、雲南省など広大なエリアに及んでいる。


 僧の中から選ばれた者が医師になる

 ところで、大きなチベット寺院に行ってみると、境内の一部に「蔵医院」を併設していることがある。それは、人の「心と身体は一体」のもので、心を癒すのも身体を治すのもチベット僧の役割だったからである。したがって、寺院に「蔵医院」があるのはごく自然なことで、僧の修行をしている者の中から「医師になる素質のある者」だけが特に選ばれて医学を学んだという。
 現在でも、「青海省蔵医院」の医師の中には、はるか遠くタクラマカン砂漠で暮らしている遊牧のチベット族の患者さんを自宅に住まわせ、完治するまで無料で面倒をみている人がいる。チベットでは「医師になる素質のある者」とは、このような人のことをいうようだ。


 チベット第一級の至宝

 今回の「聖地チベット」展では、ポタラ宮、チベット博物館、ノルブリンカ(ダライ・ラマの離宮)、サキャ寺など、チベット第一級の文物を所蔵する権威ある施設からやってきた最高の宝物を間近に見ることができる。それぞれの施設を巡るのは、時間的にも費用的にも大変な作業を要するので、チベット文化に関心をお持ちの向きには絶好の機会となるだろう。また、懇切丁寧に展示作品を解説している大部の展示図録(2,300円)も、人々の暮らしの中で生きているチベットの教えを知るうえで大いに参考になる。
(Text/飯田 徹)

 

「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」展示概要

序 章 吐蕃王国のチベット統一

ソンツェンガンポ坐像
ガルトンツェン立像
魔女仰臥図
など3点


第1章 仏教文化の受容と発展

釈迦如来坐像
蓮マンダラ
弥勒菩薩立像
カーラチャクラ・タントラ
四部医典
パドマサンバヴァ坐像
ミラレパ坐像
ツォンカパ坐像
ダライラマ一世坐像
など29点


第2章 チベット密教の精華

金剛界五仏坐像
不空成就如来坐像
十一面観音立像
十一面千手千眼観音菩薩立像
カーラチャクラ父母仏立像
グヒヤサマージャ坐像タンカ
白傘蓋仏母立像
など62点


第3章 元・明・清との往来

サンギェペル帝師印
灌頂国師之印
青花高足碗
仏龕
など13点


第4章 チベットの暮らし

チャム装束
四部医典タンカ・樹木比喩図
四部医典タンカ・人体骨格図
など16点


同展はすでに福岡と札幌で開催、東京展の後は大阪と仙台に巡回する。
◎大阪展:2010年1月23日(土)~3月31日(水)
      大阪歴史博物館 http://www.mus-his.city.osaka.jp/
◎仙台展:2010年4月20日(火)~5月30日(日)
      仙台市博物館  http://www.city.sendai.jp/kyouiku/museum/

 

プレゼント

「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」東京展のご招待券を10組20名様にプレゼントいたします。

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