「脱官僚」と言われたり「官僚主義」とけなされたり、
とかく世間の矢面に立たされる「官僚」とは何者か。
「人間性」から遠く隔たった「官僚精神」を鋭く描く話題作。
主演に竹下景子を得て、見所満載。


 注目される劇作家・永井 愛の新作舞台

 演劇ユニット「二兎社」は、人気の脚本家・大石 静と気鋭の劇作家・永井 愛の二人が1981年に旗揚げした二人だけの演劇集団。劇団名を「二兎社」としたのは、二人が卯年生まれだったからとか。
 その後、NHKの連続テレビ小説「ふたりっ子」や大河ドラマ「功名が辻」などで知られる大石 静がテレビの脚本に専念するため1991年に退団、以降はもっぱら永井 愛の作・演出による作品を上演している。最近作では樋口一葉の軌跡を描いた「書く女」(06年、主演の寺島しのぶがこの舞台で朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞最優秀女優賞などを受賞)や、教育現場の日の丸・君が代問題をテーマにした「歌わせたい男たち」(05年、朝日舞台芸術賞グランプリ=二兎社・秋本松代賞=戸田恵子、読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞=永井 愛・最優秀女優賞=戸田恵子などを受賞、08年に再演)が話題を呼んでいる。


 わが心に「官僚性」は巣くっていないか?

 今回のテーマはずばり「官僚主義」。国民の幸福を追求することより、自らの保身と組織の維持拡大、権力基盤の安定強化と責任回避を最優先に考えるとされる「官僚」は、そのために往々にして形式主義と詭弁、ときに欺瞞、あるいは日常的に隠蔽や秘密主義に陥り、人間性を喪失してしまうことがある。
 それは実は官僚組織の中のことだけでなく、「組織」と名のつくものすべてにあり得ることなのである。そして、私たち一人ひとりの心の中にも「官僚的精神」として巣くっているかもしれない……。卑劣な「官僚精神」は、決して他人事ではないのである。
 この「人間性」とかけ離れた悪しき「官僚性」がわが国の精神風土となってこの国を覆うとき、一体どうなるか……。


 どこの町でも起きそうなこと

 舞台は東京郊外のK市。そのK市から、都内でイベント企画会社を営む六枝(むつえだ)りんこ(竹下景子)に「地域おこし事業のイベントプロデューサー」の仕事が舞い込んでくる。50歳を過ぎてようやく独立を果たしたりんこにとっては千載一遇のチャンス、否が応でも張り切らざるを得ない。
 主催する文化スポーツ財団の理事長(銀粉蝶)の発案で、キャッチフレーズは「話し合おう、知り合おう」に決まった。
 一方、アートディレクターに指名された入川クニヒト(山口馬木也)は、町のあちこちに「かたりの椅子」を配置して市民が自由に話し合えるようにする「かたりの椅子プロジェクト」と、市民が町の記憶を発掘する市民劇「K市外伝」の上演の二つを企画の2本柱として提案する。


 「立場」がつくる対立と闘争

 ところがこの入川の提案に、理事長は危機感を抱く。個人情報の漏洩への危惧や、過去の住民闘争など町の「負の歴史」が表に出ることを恐れたからだ。そこで「プロデューサー」のりんこを介して何とかこの計画を見直すよう働きかけようとする、のだが……。
 やがて「家族みんなで楽しめる明るいイベント」をめざす理事長派と、「町のアイデンティティを検証しよう」とする入川サイドとの対立は抜き差しならないものとなり、間に入ったりんこをきりきり舞いさせることになる……。


 存在感のある多彩な顔ぶれ

 今回の舞台の見所は、何と言っても永井 愛の作劇術。日常、無意識に発する「言葉」や「習慣」となった何気ない振る舞いの中に潜む問題を鋭くすくい取り、それを暮らしに根ざしたリアルな状況設定の中で見せる技には定評がある。
 さらに、主演の竹下景子をはじめ、9人の出演者全員が二兎社の舞台は初めてというのも注目されるところ。連続テレビドラマ「剣客商売」などで活躍する山口馬木也ほか、アングラ、小劇団からお笑い系まで、存在感にあふれた多彩な顔ぶれが激しくぶつかり合う。
 現代の政治状況と照らし合わせてみるとき、「官僚」のテーマはまさにタイムリー。「笑っている場合だろうか……」と背筋が寒くなる舞台になるかもしれないが……。
(TEXT/水木 良太郎 PHOTOGRAPHS/二兎社)

 

二兎社

Tel. 03-3991-8872 担当/本郷・安藤
http://www.nitosha.net/


東京公演: 2010年4月2日(金)~4月18日(日) (全20ステージ)
会場: 世田谷パブリックシアター
Tel.03-5432-1526
http://setagaya-pt.jp/

公演スケジュール:
4月 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日
開演
14時
19時
◎は公演後にポスト・パフォーマンス・トーク有り
①7日(竹下景子+永井 愛)、②日程未定(堤 幸彦+永井 愛)
※開場は開演の30分前。
※7日(水)はビデオ収録用のカメラが入ります。
※託児サービス 全公演有。
 問合せ・お申し込みは世田谷パブリックシアター 03-5432-1530
※車椅子スペース有。
 問合せ・お申し込みは世田谷パブリックシアター 03-5432-1515

 チケット料金:1F席=5,500円 2F席=5,000円 3F席=4,000円
学割2,000円(3F席のみ。要学生証提示)
当日券は開演1時間前より販売。
一般前売開始:2010年2月13日(土)10:00
チケット取り扱い:e+ http://eplus.jp/sys/main.jsp
二兎社、劇場チケットセンター

●全国公演:2010年3月6日(土)~3月28日(日) (8カ所 全10ステージ)
3月 6日 (土)  埼玉: キラリ☆ふじみ  14:00開演
11日 (木)  新潟: りゅーとぴあ  19:00
13日 (土)  福島: いわきアリオス  15:00
19日 (金)  神奈川: 杜のホールはしもと  19:00
20日 (土)  同:  14:00
21日 (日)  長野: まつもと市民芸術館  18:00
22日 (祝)  同:  14:00
24日 (水)  東京: 亀戸カメリアホール  19:00
27日 (土)  大阪: シアター・ドラマシティ  18:00
28日 (日)  滋賀: びわ湖ホール  17:30

 

プレゼント

「Libera」の読者10名様に、「かたりの椅子」の公演プログラム(500円)をプレゼントいたします。

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