ミュージカル女優の草分けとして知られる草笛光子と
変わらぬ若々しさながら円熟味を増す太川陽介。
その二人がダンスを軸に演じる「二人芝居」。
人生には何が一番大切か、教えてくれる……。


 才人、アルフィエリ

 「6週間のダンスレッスン(Six Dance Lessons in Six Weeks)」を書いたリチャード・アルフィエリ(Richard Alfieri)は、舞台や映画、TV の脚本家でありプロデューサーであり小説家であり俳優でもある。しかも、その作品はいくつもの賞を受賞しており、エミー賞にノミネートされたこともある。彼の脚本 で舞台にも映画にもなった「The Sisters(2005 年)」などはその代表的な例であろう。
 アルフィエリは1952 年フロリダ生まれでエール大学の出身。知的で多才、というのがアルフィエリに対する一般的な評価だが、劇中に緊張を生むダイアローグ(対話)の見事さは特筆に値する。


 世界16 都市で上演されたヒット作

 この二人芝居「6週間のダンスレッスン」が初めて上演されたのは2001年のこと。劇場はロサンゼルスのGeffen Playhouse だった。
 当時の劇評によると「A wonderful combination of comedy and bittersweet drama.(喜劇とほろ苦さの素晴らしいコンビネーション-UPI)」とか、「An engaging tragicomedy!(魅力的な悲喜劇!-Chicago Tribune)」といった賛辞に満ちていた。実際、この舞台は、ともすると暗くなりがちなテーマを、明るいユーモアと大人のペーソスに包んで軽快な舞台に仕上げており、たちまちニューヨークのブロードウェイに駆け上がった。以後ロンドン、マドリード、ベルリン、ハンブルク、ウィーン、ブダペスト、プラハ、それに東京からシドニー、テルアビブ、アムステルダム、アテネ、イスタンブール、ヘルシンキへと広がり、何と世界16 都市で上演されるほどのヒット作となっている。


 日本での上演回数も100 回を超える

 日本で初演されたのは2006 年のこと。劇場は銀座の博品館劇場だった。以来、再演を繰り返し、2009 年までの4年間で108 回を数えている。それでも人気は衰える気配がなく、2010 年に入ってからも地方公演が続いている。
 初演から未亡人リリー・ハリソン夫人の役を演じているのは草笛光子。歌って踊って芝居のできるミュージカル女優の草分けとして最適のキャスティングだろう。実年齢に近い役柄の設定にも無理がなく、むしろその若々しく激しいダンスには驚かされるばかり。「この舞台は私のライフワーク(一生の仕事)」と言ってはばからず、「何回演じても新しい発見がある」と、厳しいトレーニングを重ねながらこの舞台に取り組んでいる。
 一方のダンス・インストラクター、マイケル・ミネッティの役は当初、人気のダンサー、今村ねずみだった。しかし今回は、元アイドル歌手にして俳優の太川陽介を起用している。依然として若々しく、テンポのいい台詞まわしに円熟味を増して、今が旬といってもよさそうだ。


 胸に沁みるシーン

 ストーリーは、フロリダの瀟洒なリゾートコンドミニアムに住む未亡人リリーが、ダンスのインストラクター、マイケルに個人レッスンを申し込むところから始まる。年齢も境遇も価値観も異なる二人が、なかなか相手を受け入れられず、諍(いさか)い、行き違い、相手をなじり合いながらも、お互いに寄り 添わなければ成り立たない「ダンス」を通じて、やがて徐々に心を通い合わせるようになる、のだが……。
 今回の舞台は、新たな相手役の登場に合わせて美術、衣装、髪型など、すべてを一新している。その6週間の間に行われる6種類のダンスレッスンがまた、大きな見所でもある。

1 週目 スウィング
2 週目 タンゴ
3 週目 ワルツ
4 週目 フォックストロット
5 週目 チャチャチャ
6 週目 コンテンポラリーダンス
 圧巻はトニー・ベネットの「The best is yet to come(人生最良の日はまだこれらから)」の歌声が流れる「フォックストロット」のシーンだろうか。この曲はフランク・シナトラの持ち歌としてもよく知られているが、アルフィエリはトニー・ベネットの歌声で「若々しさ」を強調したかったようだ。恋人を得た歓びの歌だが、二人への「応援歌」のようで、胸に沁みる。



 命に火をつけるダンス

 井上陽水の歌に「ダンスはうまく踊れない」というのがある。その中に「ひとりきりではダンスはうまく踊れない……」というフレーズがあるが、喧嘩をしていてもダンスはうまく踊れないのだ。相手に呼吸を合わせようとしなければ、ダンスは成り立たないのである。
 リリーの心の傷と限られた命、マイケルの苦悩と希望のない日々が、手を握り、呼吸を合わせ、身体を寄せ合うことで、徐々にお互いのものになっていく。
 もしもダンスがなかったら、お互いに相手を受け入れることができただろうか。果たして、ダンスという協同作業を抜きに、相手の心のゆらぎを確かめる術があっただろうか。言葉を投げ合うだけの関係は、虚しい……。まずは二人で力を合わせ、一つのことに取り組むことが大切なのだ。
 命に火をつけるダンスの魅力に改めて気づかされる、見応えのある舞台である。
(Text/水木康太郎 Photographs/CAT プロデュース)

 

CAT チケットBOX

Tel. 03-5485-5999
http://www.stagegate.jp/performance/2007/6dl6w2010/index.html (PC&携帯)


チケット: イープラス http://eplus.jp/sys/main.jsp (PC&携帯)
東京公演: 2010 年6 月10 日(木)~ 6 月27 日(日)(全16 ステージ)
会場: 「あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)」
東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル2~3F
Tel. 03-5391-0516 http://www.owlspot.jp
料金: 一般6,600 円(全席指定、税込)
公演日程:
6月 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
開演
14:00

19:00
スタッフとキャスト:
原作/リチャード・アルフィエリ
翻訳/常田景子
演出/西川信廣
美術/朝倉 摂
音響/高橋 厳
照明/大石真一郎
出演/草笛光子、太川陽介
共催/(財)としま未来文化財団
企画・主催・製作/シーエイティプロデュース

 

プレゼント

主演の草笛光子さん直筆サイン入り舞台写真を5名様に差し上げます。

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