
WILDSWANSの、
あの美しくも堅牢な製品はどのようにして生み出されるのだろうか。
読者プレゼント用に「Libera」特注の「Clipper(キーケース)」を
作っていただけるとのことで、茨城県のアトリエにお邪魔して、
制作の一部始終を見せていただいた。

寒さが厳しい取材当日、茨城県のJR取手駅で、代表の鴻野 正好(こうの まさよし)氏と待ち合わせた。WILDSWANSのアトリエは鴻野氏のご実家の敷地内に建てられているのである。
駅から車で約30分、道すがら鴻野正好氏の子どものころの話などに耳を傾けながら、地平線が見渡せそうな関東平野をゆっくりとドライブする。バス釣りで有名な新利根川を横切ると、昔ながらの大きな日本家屋が建ち並ぶエリアに着く。立派な生け垣に囲まれたご実家の離れはかつて鉄工所だったそうで、当時の面影を残しつつも、柔らかな陽の光が射し込むアトリエになっていた。
実弟の鴻野 弘好(こうの ひろよし)氏がアトリエ長を務めている。いかにも実直そうな、職人気質のあふれた人柄に気分がほころぶ。
職人さんたちが作業に打ち込むアトリエは整然としており、意外なほど静か。電動ミシンが機関銃のようなうなりを上げる「革工場」とは確かに違う。ここはまさに「アトリエ」と呼ぶのにふさわしいたたずまいを備えている。
マニュファクチュールの原点を目指す鴻野正好氏の考えで、職人さんやスタッフは皆、地元の人か、お互いに深い縁のある人たちばかり。このような徹底した地元意識が、心を一つにして厳しい製品管理に取り組むことを可能にし、製品に独特の暖かみを生んでいるのだろう。製品は地域の誇りであり、チームワークの証なのである。

アトリエに一歩足を踏み入れると、2台の大型機械がまず目につく。鉄工所時代の名残かと思うほどの大きさだが、これが実は革加工の専用機械。「ホリイ」のプレス機は何トンもの力で一気に革を型抜きしたり、張り合わせた革の圧着に使用したりする。圧力を細かい精度で設定できるため、革を傷めずにベストな力加減で加工できるという。
製品のオリジナリティが宿る「抜き型」はすべて、スウェーデン鋼を使用している信頼のおける型屋さんに特注している。鴻野正好氏が「もし万が一火事になったとしても、何としてもこの型だけは持ち出す」と語るほど、大切に保管されている。「型さえあれば、再起することは可能」だからだ。
弟の鴻野弘好氏が、革を確かめながら傷がない場所を探し、大きな素材の中から使える部分だけを丁寧に選んで型を置き、一気に打ち抜く。その姿は真剣そのもの。厳かな雰囲気さえ漂う。
一方、革の厚さを10分の1ミリ単位で薄くできる「NIPPY」は、歯の部分だけをわざわざイタリア製に変えるというこだわりよう。まるで鉋(かんな)で削るように革を薄くできるため、革の厚みを揃えたり、内側と外側の厚みを変えたりと、自由自在。何度も試行錯誤を繰り返しながら、一番使いやすくて美しい厚さに革を加工していく。
また、今回制作していただいた「Libera」特注の「Clipper」は、WILDSWANSの製品の中でもロングセラーを誇る人気商品。
どこが特注かというと、刻印を通常のWILDSWANSに加えて、直営店のC.O.U.とのダブルネームにしてもらったのだ。わずか限定3個の製品でありながらダブルネームが可能になったのは、刻印を打つ作業もアトリエで一つ一つ手作業で行っているからである。「C.O.U.」の刻印を用意して頂き、特別にセッティングすることで実現したものだ。
「良いものを創るため」とはいえ、これだけの道具類を揃えるのは、よほどの思い入れがないとできないことだろう。

機械での作業もすべて職人さんによる手作業になるわけだが、続く革の接着や金具の取り付けなどもすべて手作業で行われていた。スナップボタンの取り付けは、開く方向に対して力が一方的に掛かりすぎないようにバネの向きをタテに揃えて固定する。
また、アトリエが思いのほか静かだったのは、縫製のすべてを足踏み式のミシンで行っていたからだった。縫製はそれぞれの革の具合に合わせてスピードを調節する必要があるため、昔ながらの製法にこだわっている。カーブに沿って滑らかにミシンを操作する手つきに、思わず見入ってしまう。
WILDSWANSの製品に見られる独特のコバの丸みを出すための鉋(かんな)をかける作業から、革の表面を丁寧に磨く作業、完成した製品を化粧箱に収める作業に至るまで、すべて見事に手作業で行われていた。

製品を作る全行程を余すところなく見せていただいたが、最後のコバの仕上げ方だけは企業秘密ということで、残念ながらここではご紹介できない。しかし、この仕上げにこそWILDSWANSの神髄が表れていた。染料をコバに染み込ませて磨くのだが、この段階で染料が染み出てせっかくの製品をダメにしてしまうこともあるそうだ。かなり根気のいる作業で、革が輝くようになるまでには相当な熟練を要する。
他にも接着剤や仕上げ材など、独自に開発した素材や機械が数多くある。職人さんによる緻密な手作業と創意が、オリジナリティ溢れる革製品を次々に生み出していた。

彼らのモノづくりにかける作業を見ていると、確かに「仕事」ではあるのだろうが、効率と合理性を突き詰めた「ビジネス」とはとても思えない。つまり、コストを切り詰め、手間を省き、売れ筋を意識しながら「何とか売ろう」という下心がまるで見えないのだ。むしろ、作業のほとんどは逆だ。できるだけ上質な素材を買い付け、それを手間ひまかけて丁寧に仕上げ、流行に左右されることなく、お客様に提供するに値すると信じられる製品だけをひたむきに作り続けている。
この世の中は本当によくしたもので、そうした製品の良さを見抜くことのできる消費者がいるのである。一つ一つ、職人さんが心を込めて仕上げた製品ならではの持ち味を愛し、技の感じられる製品、長持ちする製品、持つ歓びや使う楽しさを味わえる製品を求める人たちが必ずいる。
「商売」の仕方にもいろいろあるが、彼らが求めているものが「最上の製品」だとしたら、それはもはやビジネスというよりアートの世界に近い。なぜなら、アートは人に「感動」をもたらすものだからである。
「Libera」とWILDSWANSのコラボレーションにより、これだけの技術と思いが詰まった逸品。読者プレゼントに応募して運良く当選された方には、きっと末永く愛用していただけるものと確信している。
(TEXT/飯田 健太郎 PHOTOGRAPHS/寺田 明香)

http://www.wildswans.jp/index.html
〒104-0061 東京都中央区銀座2-9-4 銀座アイタワー1F
TEL. 03-3563-5040
http://cou-shop.jp/
営業時間:11:00~20:00/日・祝日11:00~19:00
定休日:不定
〒104-0061 東京都中央区銀座2-11-11 第2銀座ヤマトビル6F
Tel. 03-6226-3533

WILDSWANSとC.O.U.のダブルネームを刻印した「Libera」特注の「Clipper(キーケース)」(10,500円、税込)を3名様にプレゼントいたします。
※色の選定は「Libera」編集部におまかせいただきます。