ブリューゲルの傑作、24年ぶりの来日! ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて- 東京都美術館のペア鑑賞券を5組10名様にプレゼント

ピーテル・ブリューゲル1世「バベルの塔」1568年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ピーテル・ブリューゲル1世「バベルの塔」1568年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

旧約聖書に登場する「バベルの塔」の物語は、天まで届く塔のある町を建てようとする人間が神の怒りにふれ、その傲慢を戒められてお互いに言葉を通じないようにされ、ついに完成することはなかったというもの。しかし、ボイマンス美術館のシャーレル・エックス館長は「ブリューゲルは神の怒りよりもむしろ、人々の挑戦の場面を描いた」という。

ヨハネス・ウィーリクス(版刻)「ピーテル・ブリューゲル1世の肖像(部分)」1600年 エングレーヴィング  Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヨハネス・ウィーリクス(版刻)「ピーテル・ブリューゲル1世の肖像(部分)」1600年 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

精緻を極める描写力

バベル(Babel)の名はヘブライ語の「混乱」に由来するそうだ。そのバベルの塔があったとされるのが、メソポタミア地方の古代都市バビロン(Babylon)。その遺跡は、現在のイラクの首都バグダッドの南約90kmのヒラで発掘されている。しかし、実際にバベルの塔があったかどうかは今も分かっていない。ブリューゲルが描いた「バベルの塔」はもちろん、架空のものだが、あたかも実際に塔を見て描いたかのように精緻をきわめている。拡大して見ると、その精密な描写力は驚異的だ。

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵)/フランス・ハイス(版刻) 「アントワープの聖ゲオルギウス門前のスケート滑り」1558年頃 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵)/フランス・ハイス(版刻) 「アントワープの聖ゲオルギウス門前のスケート滑り」1558年頃 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

2つの「バベルの塔」

これだけ堂々たる油彩画なので、さぞかし巨大な画面に違いないと思いきや、実際のサイズは59.9cm×74.6cmと意外に小さい。ブリューゲルが描いた「バベルの塔」は、実は2種類ある。1つは今回、展示されるロッテルダムのボイマンス美術館が所蔵するもの。もう1つはウィーン美術史美術館にあり、こちらは114cm×155cmとサイズがやや大きい。制作年代も1563年と、ウィーンの方が少し早い。そのため、そのサイズからウィーンのものを「大バベル」、ボイマンスのものを「小バベル」と呼ぶこともある。

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵、版刻)「野ウサギ狩り」1560年 エッチング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵、版刻)「野ウサギ狩り」1560年 エッチング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

壮大なスケール感

どちらの「バベルの塔」を好むかはさておいて、緻密さの度合いでは、後から描かれたこともあってか、今回の小バベルのほうが圧倒的に精密に描かれている。しかも、塔はより高く、雲を突き抜けており、壮大なスケール感を生み出している。その上、エックス館長も指摘しているように、人々はいきいきと、喜んで塔の建設に励んでおり、天罰を受けるような悲壮感も罪悪感も見当たらない。塔には教会と思しきものも描かれており、神への挑戦といった荒々しさはない。むしろ淡々と、人の営為を讃えているかのようだ。そのあたり、必見の名画といってよさそうだ。

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵)/ピーテル・ファン・デル・ヘイデン(版刻) 「大きな魚は小さな魚を食う」1557年 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ピーテル・ブリューゲル1世(下絵)/ピーテル・ファン・デル・ヘイデン(版刻)
「大きな魚は小さな魚を食う」1557年 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

奇想の画家、ボス

ブリューゲルの「バベルの塔」もそうだが、16世紀ネーデルラントの画家たちは、伝統の写実と精密描写を駆使しながら、実際には存在しない幻想的な世界を数多く描いている。中でも、2016年に没後500年を迎えたヒエロニムス・ボスは“奇想の画家”とも呼ばれ、ありふれた日常の中から思いもよらないシーンを描き出して衝撃を与える。特に、画面の中にふんだんにちりばめられた謎めいたモチーフの数々は、まさに想像の世界の創造的産物だ。

ヒエロニムス・ボス「放浪者」1500年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヒエロニムス・ボス「放浪者」1500年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヘンドリック・ホンディウス1世(版刻)「ヒエロニムス・ボスの肖像(部分)」1610年 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヘンドリック・ホンディウス1世(版刻)「ヒエロニムス・ボスの肖像(部分)」1610年 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヒエロニムス・ボス「聖クリストフォロス」1500年頃 油彩、板  Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands (Koenigs Collection)

ヒエロニムス・ボス「聖クリストフォロス」1500年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands (Koenigs Collection)

精密な模倣作品まで登場

ブリューゲルが下絵を描いた版画「大きな魚は小さな魚を食う」もその一つだが、ヒエロニムス・ボスのモチーフを使って構成された作品は当時、大変な人気を呼んだようだ。そのため、ボスが亡くなった後も数多くの模倣品がつくられ、各地に広がったという。特に、大量のモンスターが聖アントニウスを囲んで信仰を捨てさせようとする場面を描いた「聖アントニウスの誘惑」は40以上の模倣作が作られたそうで、余りに忠実にコピーされたため、それ自体“逸品”とされるものまで出現している。

作者不詳(ボス作品の模倣)「聖アントニウスの誘惑」1540年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

作者不詳(ボス作品の模倣)「聖アントニウスの誘惑」1540年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

選りすぐりの90点

ネーデルラント美術は、14世紀から16世紀にかけて、現在のベルギーからオランダにまたがる地方で発達したもの。オランダのロッテルダムにあるボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館(通称ボイマンス美術館)は、1849年に創立されたオランダ屈指の美術館。ブリューゲルやボスに代表される16世紀ネーデルラント美術の名品の数々は、同館を代表するコレクションだ。その中から絵画、彫刻、版画など、選りすぐりの約90点を紹介する今回の展覧会、ぜひロッテルダムまで足を運んだつもりで見に行ってほしい。

アルント・ファン・ズヴォレ(推定)「四大ラテン教父(聖アウグスティヌス、聖アンブロシウス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス)」1480年 オーク材 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

アルント・ファン・ズヴォレ(推定)「四大ラテン教父(聖アウグスティヌス、聖アンブロシウス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス)」1480年 オーク材 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ディルク・バウツ「キリストの頭部」1470年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ディルク・バウツ「キリストの頭部」1470年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ルカス・ファン・レイデン「ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻」1512年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ルカス・ファン・レイデン「ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻」1512年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヨアヒム・パティニール「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」1520年頃 油彩、板 Loan Netherlands Cultural Heritage Agency, Rijswijk/Amersfoort, on loan to Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

ヨアヒム・パティニール「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」1520年頃 油彩、板 Loan Netherlands Cultural Heritage Agency, Rijswijk/Amersfoort, on loan to Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

●ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて- 概要
会 期:2017年4月18日(火)〜7月2日(日)
会 場:東京都美術館 企画展示室
開室時間:9:30〜17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日(ただし5月1日は開室)
観覧料:一般1,600円、大学生、専門学校生1,300円、高校生800円、65歳以上1,000円(いずれも当日券)
※団体割引の対象は20名以上、中学生以下は無料
障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料
●展覧会への問い合わせ
Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:http://babel2017.jp
●読者プレゼントのお知らせ
エントリー期間中、セゾンカード・UCカードを1,000円(税込)以上ご利用のうえエントリーいただいた方の中から抽選で5組10名様に、東京都美術館「バベルの塔」展のペア鑑賞券をプレゼントいたします。

エントリー期間:2017年1月17日(火)〜2月24日(金)

※当選者の発表は、賞品の発送(2017年3月中)をもってかえさせていただきます。

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