名だたる芸術家を虜にしたHOKUSAI 北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃 国立西洋美術館 ペア観覧券を5組10名様にプレゼント

(左)葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分)刊年不詳 浦上蒼穹堂
(右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894年 パステル、紙(ボード裏打)66×47cm 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)

19世紀後半、鎖国を解いた日本の美術は西洋に流れ込み、日本に対する関心は急速に高まっていった。中でも、天才浮世絵師・葛飾北斎は、欧米の多くの芸術家を魅了し、“ジャポニスム”という現象まで生み出して大きな影響を与えたという。ジャポニスムとは何か、なぜ北斎か、彼は西洋の芸術にどのような革新をもたらしたのか、「日本発、世界初」の展覧会でその全貌を見てみよう。

(右)葛飾北斎《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》天保元-4年(1830-33)頃 横大判錦絵 ミネアポリス美術館 
Minneapolis Institute of Art, Bequest of Richard P. Gale 74.1.237 Photo: Minneapolis Institute of Art
(左)クロード・モネ《陽を浴びるポプラ並木》1891年 油彩、カンヴァス 93×73.5cm 国立西洋美術館(松方コレクション)
北斎の作品を所有していたモネ。そのモネの《陽を浴びるポプラ並木》は、北斎の《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》に描かれた松の並木に呼応する。

ジャポニスムとは何か?

国立西洋美術館長・馬渕明子氏の著書『ジャポニスム 幻想の日本』(ブリュッケ刊)によると、ジャポニスムとは「一九世紀後半に、ヨーロッパやアメリカ(西欧)の美術に与えた日本美術の影響を言う」そうだ。「その影響は美術のすべての分野に及び、絵画、彫刻、版画、素描、工芸、建築、服飾、写真に広く見られ、さらに演劇、音楽、文学などから、料理にいたるまでの諸例が報告されている」というから驚く。ちなみに、それらは単なる日本趣味の“ジャポネズリー”とは意味を異にするそうなので、注意深く見ておく必要がある。

葛飾北斎『北斎漫画』十一編(部分)刊年不詳 浦上蒼穹堂
なぜ北斎がジャポニスムの代表選手になり得たのか。それは、『北斎漫画』に見られるように、北斎こそが、人物のみならず、動物、植物、風景、建築など、あらゆるジャンルのモチーフを一人で描くことができる天才絵師だったからである。

単なる日本趣味とは異なるムーヴメント

たとえば、同書の中で馬渕氏は、有名なクロード・モネの《ラ・ジャポネーズ》について、絵の中に着物や扇子や茣蓙(ござ)が描かれているからといって、その絵をただちにジャポニスムの作品とは呼ばないのだという。それはモチーフが単に日本というだけであって、日本の作品から影響を受けたわけでも、構図や描き方がそれまでの西洋絵画に見られなかったものでもないからである。ジャポニスム(日本からの影響を受けた創造活動)とジャポネズリー(日本趣味)とは、全く異なる概念なのだ。

エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894年 パステル、紙(ボード裏打)66×47cm 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)
「踊り子の画家」と呼ばれたドガにとって、『北斎漫画』に登場する人物(お相撲さん)の何気ない動きをとらえたポーズは、彼の研究心を刺激したに違いない。

北斎が西洋にもたらした革新

たとえば、ここにある『北斎漫画』の布袋(ほてい)和尚の図。いつも堪忍袋を背負って、人の悪口や陰口はすべて袋にしまいこんでしまうという七福神の一つだが、そのゆったりとくつろぐ姿が、メアリー・カサットの作品《青い肘掛け椅子に座る少女》と二重写しになる。それまで、幼い女の子は行儀の良いポーズでしか描かれなかったそうだが、北斎によって、子どもの退屈そうな様子は、退屈なままに描かれてもよいと宣言されたかのようで、表現の幅が一気に広げられたのだという。「描きたいものを、描きたいように描ける」という開放感こそ、北斎が西欧にもたらした革新性だったようだ。

葛飾北斎『北斎漫画』初編(部分)文化11(1814)年 浦上蒼穹堂

メアリー・カサット《青い肘掛け椅子に座る少女》1878年 油彩、カンヴァス 89.5×129.8cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー 
National Gallery of Art, Washington, Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, 1983.1.18 Courtesy National Gallery of Art, Washington

ジャポニスムは模倣や模写ではない

葛飾北斎には、有名な「冨嶽三十六景」(実際には46点)があるが、これは富士山をさまざまな地点から描いたもので、傑作の誉が高い。この「冨嶽三十六景」同様、ポール・セザンヌにも、南仏のサント=ヴィクトワール山をさまざまな角度から描いたシリーズがある。ここに見るセザンヌの《サント=ヴィクトワール山》は、遠景に主題となっている山を描き、手前に木々を配して俯瞰的に中景の田園風景を描いている。この構図は、北斎の《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》を想起させる。とはいえ、タッチや色彩感覚はセザンヌそのものである。

葛飾北斎 《冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二》天保元-4年(1830-33)頃 横大判錦絵 オーストリア工芸美術館、ウィーン
MAK – Austrian Museum of Applied Arts / Contemporary Art, Vienna Photo: ©MAK / Georg Mayer

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山》1886-87年 油彩、カンヴァス 79.3×92.3cm フィリップス・コレクション、ワシントンD.C.
The Phillips Collection, Washington, D.C.

ゴーガンをも魅了

モネ、ドガ、セザンヌ、ゴッホなど、日本の浮世絵に強い関心を持ち、北斎に大きな影響を受けた西欧の画家は数多いが、南太平洋のタヒチに本拠を置いた孤高の画家ポール・ゴーガンにも少なからず影響を与えていたのは、ちょっと意外な気もする。彼の描く《三匹の子犬のいる静物》には、北斎の描いた愛くるしい三匹の子犬と同様のモチーフが登場している。子犬の何気ない一瞬の表情を捉えた北斎の豊かな筆致は、このポスト印象派と言われる画家の心を強く魅了したようだ。ぜひこの展覧会でその作品を実際にご覧いただき、影響がどれほど強かったかをお確かめいただきたい。

葛飾北斎『三体画譜』(部分)文化13(1816)年 浦上蒼穹堂

東西、両方の美に精通

今回の展覧会では、西欧の名作約200点と、北斎の錦絵約30点、版本約60点の計約90点(※出品点数は予定、会期中展示替えあり)による“東西・夢の共演”が実現する。国立西洋美術館で開催された記者発表の席で馬渕館長は「国立西洋美術館で日本の浮世絵作品が展示されるのは初めて」だという。同時に、こうした展覧会を可能にするためには、東西、両方の美に精通していなければ不可能であろう。その膨大な知の蓄積と美への洞察、監修者として、あるいは西洋近代美術を専門とする学者としての馬渕館長の学識の広さと深さには、感嘆せずにはいられない。

記者発表の席で展覧会の趣旨について説明する馬渕明子館長。
東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。パリ第四大学大学院博士課程で学び、東京大学助手、国立西洋美術館主任研究官、日本女子大学人間社会学部教授等を経て2013年より現職。ジャポニスム学会会長。日本サッカー協会副会長でもある。

●国立西洋美術館 「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」
会 期:2017年10月21日(土)〜2018年1月28日(日)
会 場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
開館時間:9:30〜17:30 ※金曜日・土曜日は20:00まで。ただし11月18日(土)は17:30まで。 ※入館は閉館の30分前まで。
休館日:毎週月曜日(ただし1月8日は開館)/12月28日(木)〜2018年1月1日(月)/1月9日(火)
観覧料:一般1,600円(1,400円)、大学生1,200円(1,000円)、高校生800円(600円) ※( )内は前売および各20名以上の団体料金 ※中学生以下および障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は無料
●展覧会への問い合わせ
Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト http://hokusai-japonisme.jp
●読者プレゼントのお知らせ
エントリー期間中、セゾンカード・UCカードを1,000円(税込)以上ご利用のうえエントリーいただいた方の中から抽選で5組10名様に、国立西洋美術館「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」のペア鑑賞券をプレゼントいたします。

エントリー期間:2017年7月14日(金)〜2017年8月25日(金)

※当選者の発表は、賞品の発送(2017年9月中)をもってかえさせていただきます。

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