デビュー直後から世の革好きを虜にする「WILDSWANS」。
その独自の美学から生まれた技術とデザインをご紹介しよう。


 革製品は永く愛用できるものがいい

 WILDSWANSの革製品の魅力は、いつまでも愛用できる点にある。
 その最大の特徴は、独特なコバ(革の切り口)の仕上げ方。代表の鴻野(こうの)正好氏が全く革製品の作り方を知らないままに、とにかく頑丈で美しい製品に仕上げたいという思いから生まれたものだ。
 当初は薄い革を巻き込んで縫い上げる、通常の「へり返し」と呼ばれる仕上げ方を目指していた。しかし、どうにも満足できない。おまけに薄い革は傷みやすく、破れないようにすると見た目が無骨なものになる。そこで、張り付けた革を鉋(かんな)で削って染料を染み込ませ、素材そのものを磨き上げる方法を目指した。言わば、革製品の素人だったからこそできたこの方法は、当時の職人たちを驚かせた。その粘り強い工夫と努力が、後のWILDSWANSのブランド力となって生きる。これには実家の鉄工所にあった工業用の研磨機や父親からの助言も大いに役立ったという。
 また、製品によって付属品として付けられている木製のコバ磨きも、永く使ってもらうための隠れた逸品。これだけを欲しがるファンもいるほどだ。
 通常の革製品の場合、コバの部分は顔料の表面張力を利用して丸みを出している。そのため、傷がつくと顔料ごと剥がれてしまう。しかし、WILDSWANSのコバは革そのものに染料をたっぷり染み込ませて、素材そのものを磨き上げてあるため、付属のコバ磨きを使って磨けば元の綺麗な仕上げに戻すことができる。
 この徹底した「永く愛用してもらう」ための哲学が、多くの目利きや革物好きに惚れ込まれる最大の理由と言える。


 なぜ、革はいつの時代も愛されるのか

 手帳や財布、バッグにはじまり、靴、ベルト、車のシート、ソファや傘の持ち手にいたるまで、革はさまざまな製品に使われている。「革」は、なぜこれほどまでに人々の心を魅了するのだろうか。
 まず、革は布などと比べるとはるかに耐久性が高く、きちんと作られた物は手入れさえすればいつまでも永く愛用できる。また、化学繊維にはない深い味わいや感触、使い方次第で変化していく面白さ、さらに一つとして同じものにならない色合いの経年変化も魅力的だ。
 使い込むほどに柔らかくなじんできて、滑らかな艶を帯びてくる革製品には独特の愛着が湧いてくる。この「生き物」とさえ呼びたくなるほど微妙に変化していく深い味わいこそが革製品の最大の魅力だろう。


 良いものは良い人に恵まれる

 1993年に初めて自分のミシンを買い込んだ鴻野氏は、もとは商社のサラリーマン。生産と廃棄が繰り返される大量消費社会にあって、いつまでも大事に扱われる物を作りたかったという。
 最初は東急ハンズのクラフトコーナーで革を買い、参考書を読みながら7万円で手に入れた革細工用のミシンで試行錯誤を繰り返した。財布の型を一つ作るのにも30個以上のサンプルを作り、身近な人に買ってもらうところから始まった。翌94年にはWILDSWANSの母体である「K’s Factory Co., Ltd.」を立ち上げ、前職で取引先だった東急ハンズでノーブランドの商品を販売、やがてOEMを中心にビジネスを広げながら技術の向上を目指す。そこで件(くだん)のコバ仕上げの手法が生まれる。
 このコバの仕上げ方に自信を得て自社ブランド「WILDSWANS」を立ち上げる決意をしたのだが、その頃、ある雑誌の編集長から取材の依頼があったという。しかし鴻野氏は「自社ブランドが正式に立ち上がるまで待って欲しい」と伝えたそうだ。結局、2年近くも待ってもらうことになったのだが、その雑誌の精力的な特集が火付け役となって多くのファンを獲得した。
 その後もさまざまな人に恵まれた。特に、万年筆好きにとっては“聖地”と呼ぶにも等しい「FULLHALTER(フルハルター)」の森山信彦氏に惚れ込まれるなど、数々のブランド神話を生むことになる。


 世界に通じる直営店「C.O.U.」

 地下鉄「銀座1丁目」駅に直結した「メルキュールホテル銀座 東京」の一階に、直営店「C.O.U.」はある。土地柄もあって外国人のお客様も多く、さまざまな人が来店している。革製品に一家言ありそうな紳士に「値段が高い」と言われたときは、鴻野氏が10年使い込んだ自分の財布を見せたという。古びていても少しも型くずれしない製品であることを知って、多くの人がユーザーになってくれるという。人はどこかで、使い捨てるよりも長持ちする商品を選ぶほうに価値を置いているのである。
 永く使える秘密は、仕入れている素材の革にもある。定番としているベルギー製のサドルレザーは、厚手で頑丈なため、耐久性とコバの仕上げに最適なのだ。しかし、高価なためにあまり使われていない。そこで、ほぼ独占状態で毎年15万デシ(1デシ=10×10cm)を仕入れているそうだ。


 独自の美学から生まれたデザイン

 WILDSWANSの独自の美学には圧倒される。
 まず、製品としてハンドメイドには見えないほどの高い完成度を求める。また、いくら綺麗に見えても、革が寿命を迎える前に製品が壊れてしまっては意味がない。いわゆる手作りによる“味”とか“素朴さ”を求めるのではなく、足踏み式ミシンを使いながら、人間の手でなければ成し得ないほど丈夫に、しかも、機械的に仕上げたものより美しく、これ以上はないというほど丁寧に仕上げられたものこそが「本物のハンドメイド」なのだ、ということを信条にしている。
 このようなポリシーのもとで生み出された同社の商品ラインナップは多彩だ。ビジネスシーンで優雅に使えるように革を薄く均一に整えたデザインもあれば、女性に喜ばれるようにカラーバリエーションを豊富に揃えたものもある。ノートカバーには万年筆と相性のいい日本製の「LIFE」のノートを用意し、万年筆ケースにはクリップを痛めないような特殊な加工が施されている。ペン同士がぶつかっても傷つくことがないように工夫された仕切りには、思わず驚嘆の声を上げたくなる。
 これらの美学は決して独りよがりのものではない。ユーザーの声に真摯に耳を傾けた結果、生まれたものである。しかも、どの製品も瑞々しく美しい。革の質感、ハンドメイドの巧みさ、クオリティの高さ、使いやすさ、どれをとっても丁寧によく考えられた製品は、ごく控えめながら、確固とした存在感を主張している。
 WILDSWANSは「野生の白鳥」を意味している。納得の逸品が世界に羽ばたく日もそう遠くはないだろう。
(Text/飯田 健太郎 Photographs/寺田 明香)

 

WILDSWANS

http://www.wildswans.jp/index.html


Office/K’s Factory Co., Ltd.

〒104-0061 東京都中央区銀座2-11-11 第2銀座ヤマトビル6F
Tel. 03-6226-3533


Shop/C.O.U.

〒104-0061 東京都中央区銀座2-9-4 銀座アイタワー1F
TEL. 03-3563-5040
http://cou-shop.jp/
営業時間:11:00~20:00/日・祝日11:00~19:00
定休日:不定
取扱いブランド:
 WILDSWANS(ワイルドスワンズ)
 Lavoro Di Passaggio(ラヴォーロ・ディ・パッサージョ)
 Antrag(アントラーク)
 Le Bonheur(ル・ボナー)
 Faber Castell(ファーバーカステル) etc...

 

プレゼント


WILDSWANSの原点となるコインケース「Tongue(タング)」を3名様にプレゼント。コインポケットの内部には仕切りが付けられているので、領収書やお札を折って収納することもできます。

カラー:レッド、グリーン、ネイビー
(革はすべてトスカーナの「ブッテーロ」)
サイズ: H78×W106×D19mm
価格/13,650円(税込み)

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