
イタリアの老舗ブランド「アルファ ロメオ」と
最新ファッションブランド
「イタリア インディペンデント」とのコラボレーションで生まれた
「Alfa Romeo Brera Italia Independent」。
時代が動くときの“お囃子”が聞こえてきそうだ……。

イタリア製のクルマは、親しみを込めて“イタ車”などと呼ばれたりする。これに匹敵するのは古き良き時代の“アメ車”だろうか。いずれも、経済合理性とかけ離れたエモーショナルな気分をそそるところがよく似ている。
“イタ車”の真骨頂は「速くなければクルマではない」といったラテン気質丸出しの明るさにある。燃費がどうの、中古車の値段がどうの、何人乗れてどれだけ運べてといったチマチマした計算を度外視して、“イタ車”はただただ「好きだから乗る」「格好いいから選ぶ」「楽しいから走る」という単純明快な動機に素直に応えてくれる。
その選択には当然、さまざまなリスクが伴う。そのリスクをはねのけて選ぶには相当な勇気がいる。そうした勇気の持ち主だけが「英雄」として尊敬されるのがイタリアという国のお国柄なのだろう。

こうしたイタリア人の価値観を理解せずにイタリア製品に惚れ込んでみても、やがて「すぐ壊れる」とか「やたら高い」「部品の調達に時間がかかる」などの現実的な理由でたちまち「ありふれたクルマ」に戻っていくことになる。
しかし、そのような「退屈なクルマ」に我慢ならないのがイタリア人気質なのだろう。塩野七生著『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』(新潮社刊)などを読むと、イタリア人はジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)以来、ファンタジーを現実にする「英雄」に強いあこがれを抱き続けているようだ。

現代のイタリアで「英雄」といえば、さしずめフィアットのルカ・モンテゼーモロ会長だろうか。未婚の伯爵令嬢の息子として生まれたミステリアスな生い立ちと毛並みの良さ。ローマ大学、コロンビア大学などで学んだシャープな頭脳とハンサムな面立ち。ラリードライバーとしても一流の腕前を持ち、F1でスクーデリア・フェラーリを見事に再生させたマネージメント能力は、並のものではない。2004年にフィアットの会長を兼務するようになってからも、たちまち再建をなしとげ、傘下のフェラーリ、マセラティ、ランチア、アルファ ロメオの棲み分けを明確にして快進撃を続けている。最近は米国のビッグスリーの一つ、クライスラーにも資本参加してその再生に手腕を発揮している。この4月にフィアットの会長職を創業家の出身で副会長のジョン・エルカーン氏に譲り、自らはフェラーリの会長に専念することになったが、カリスマ性が衰える気配は一向に見当たらない。

そのモンテゼーモロ会長率いるフィアット傘下で世界戦略を担うのがアルファ ロメオである。なかでも一連のジウジアーロ(Italdesign)のデザインによる「156」や「Brera」、「159」などは、往年のアルファ ロメオの輝きをすっかり取り戻して、グローバルブランドとしての地位を確かなものにしている。
特に3ドアのラグジュアリークーペ「Brera」は、伝統のスポーツ車という点で最もアルファ ロメオらしい1台と言えるだろう。2.2リッター、直列4気筒 DOHC 16バルブ、最高出力185psと、3.2リッター、V型6気筒 DOHC 24バルブ、最高出力260psの2種類のエンジンが用意されている。ともに「ツインフェザー」と呼ばれるアルファ ロメオ独自の可変バルブタイミング機構を備えており、低回転域から強力なトルクを発生させる。その加速の切れのよさ、小気味のよいドライブフィールは、アルファ ロメオならではのものだろう。3.2リッターのモデルには3種類のドライビングモードが標準装備されており、走りそのものに贅沢感がある。

アルファ ロメオが創立されたのは1910年のこと。ミラノにあったフランスの自動車会社「ダラック(Darracq)イタリア社」のミラノ工場を、マネージングダイレクターのウーゴ・ステラ氏が「ロンバルディア自動車製造会社(A.L.F.A)」に改めたのが始まりとか。その後A.L.F.A.は1915年にナポリの実業家ニコーラ・ロメオ氏に買収され、「Alfa Romeo」となっている。2010年の今年はちょうど、アルファ ロメオ創立100周年に当たるわけだ。
奇しくもその100周年に、Breraの3.2リッターモデル「Brera 3.2 JTS Q4 Q-Tronic」をベースに限定車が発売される。ちなみに「JTS」はパワフルな直噴ガソリンエンジンを、「Q4」はフルタイム4輪駆動を、「Q-Tronic」はシフトレバーを操作するだけでATモードもシーケンシャルのMTモードも選べる6速ATをそれぞれ意味している。限定モデルは欧州と日本、それにオーストラリアなどで900台が発売されることになっている。

アルファロメオとコラボレーションしているのが、2007年に誕生したばかりのファッションブランド「イタリア インディペンデント(Italia Independent)」社。彼らのホームページを見ると、わずかこの数年の間に世界中に販売網を広げていることが分かる。
http://www.italiaindependent.com/eng/index.php
その特別仕様車の装備は次のようなものだ。
| ・ | ボディカラー:マット仕上げのダークチタニウムカラー |
| ・ | ホイール:マットブラック仕上げのタービンスポーク18インチアロイホイール |
| ・ | フューエルキャップ:アルミ製 |
| ・ | ブレーキキャリパー:レッド仕上げ(フロントはブレンボ製4ポットキャリパー) |
| ・ | シート、ダッシュボード、インナートリム:レッドステッチでトリミングされたブッラクの「Frau®レザー」仕上げ |
| ・ | サブメーターパネル、センターコンソール、ステアリングホイールカバー:カーボン製 |
| ・ | スポーツペダル:アルミ製 |

それにしても、新興のファッションブランドが、なぜ老舗のアルファ ロメオに対してこのように対等以上に渡り合うことができたのだろうか。
実は、イタリア・インディペンデント社を立ち上げたのは、先頃までフィアットのブランド・マーケティング部長をつとめていたラポ・エルカーン氏なのである。そう、この4月にフィアット会長になったばかりのジョン・エルカーン氏の弟である。両氏は、フィアット創業家の出身で長く会長を務めた中興の祖、ジャンニ・アニエッリ氏の孫に当たる。
1977年ニューヨーク生まれのラポ・エルカーン氏は、今年33歳。フィアットのブランドマネージャーとしてかつてのFIATロゴを蘇らせ、名車「Fiat 500(チンクエチェント)」の復活に大きく寄与している。どうやら市場のトレンドに鋭く反応する嗅覚の持ち主らしい。

メガヨットを何艘も持つ彼の「富豪」としてのライフスタイルやデザインセンス、最新のテクノロジー好みを反映した「Italia Independent」のブランド戦略は、リスクを恐れない「英雄」のやり方そのもの。カーボンファイバーを使用したサングラスやキャンドルスタンド、パーティにも着ていけそうなゴアテックス製のアウトドアジャケットや、逆に普段でも着られそうな防水機能を備えたタキシードに布製の花瓶。BORSALINO(帽子)やARFANGO(シューズ)、SPY OPTIC(ゴーグル)などの一流ブランドと提携したユニークな商品ラインアップは、自由で大胆で奔放そのもの。
有り余る資金と豊かな人脈を駆使して「人生は楽しむためにある」ことを身をもって示してくれれば、それが“お囃子”となって、やがて消費に慎重な社会の雰囲気も変わってくるかもしれない……。
(Text/水木 康太郎 Photographs/飯田 健太郎)

Alfa Contact 0120-779-159(フリーコール)
http://www.alfaromeo-jp.com
または
http://jp.alfaromeo-jp.com/brera-italiaindependent/