オープンエア・モータリングにふさわしい
季節がやってきた。
風を感じて走るなら、
こんなクルマがいい……


 クルマにオープンモデルは必須

 ヨーロッパの自動車メーカーを見ていて感心するのは、どのメーカーもほとんどがオープンモデルを用意していることだ。それも、一般に「ロードスター(Roadster)」と呼ばれているようなオープン2シーターのスポーツカーだけでなく、4シーターのオープンモデルも必ずラインアップに加えていることには、思わず敬意を表したくなる。
 なぜなら日本のみならず、カリフォルニアかコート・ダジュールでもないかぎり、常時オープンエアを楽しめるような気候を持つ国は少ないからだ。多くは売れないことを承知の上で、あくまで「走る楽しさ」を忘れない姿勢が凄い。かのロールスロイスにも、オープン4シーターはある。


 「プレミアム・スポーツカー」の時代

 4シーターのオープンモデルは、馬車の時代のなごりか、ヨーロッパではもっぱらカブリオレ(Cabriole)、英国ではドロップヘッドクーペ(Drophead Coupe)、米国ではコンバーチブル(Convertible)などと呼ばれている。
 そんな市場にマセラティが初めて4シーターのオープンモデルを登場させた。
 マセラティは1994年にフィアットの傘下に入り、一時はフェラーリと一体で運営されていたが、現在はアルファロメオと共にグループを形成している。かつてレースで輝かしい成果を上げてきたことを考えると、そのイメージはあくまで「スーパー・スポーツカー」であろう。
 しかし、同じフィアットのグループにはすでにフェラーリがあるため、これと競合させるのは得策ではない。そこで狙ったのが「プレミアム・スポーツカー」のジャンルだったのではではないか。つまり、「ロングドライブはとても無理」なスパルタンなスポーツカーではなく、日常のビジネスシーンで乗っても少しも不自然ではなく、しかも「やる時にはヤル」という、いわば「羊の皮をかぶった狼」のような洗練されたクルマである。



 4シーターでありながら高性能

 このカテゴリーには、とても魅力的なメーカーが揃っている。フォルクスワーゲンの傘下で潤沢な資金を投入されて見事に蘇ったベントレー(Bentley)や、フォード傘下でいっそう性能を磨き、さらにクウェートなどから資本増強を受けて4ドア車「ラパイド(Rapide)」の市販を開始したアストンマーティン(Aston Martin)、さらには4ドア車「パナメーラ(Panamera)」の販売を開始したポルシェ(Porsche)などもその一社といってよいかもしれない。
 「4シーター」でありながら、れっきとした「高性能スポーツカー」であり、しかも「超高級車」でもある、そんな魅力をいくつも兼ね備えたクルマの時代がやってきている。


 その魅力は「非日常性」にあり

 マセラティの「グランカブリオ(GranCabrio)」は、その名の通り、2ドア4シーターのクーペ、「Gran Turismo」をベースにしている。それも、ひとまわり車格の高い「Gran Turismo S」をベース車としており、V8、4.7リッター、440HP、最高時速283km/h以上というスペックは申し分がない。
 マセラティの魅力はひとえにその「非日常性」にある。筆者はマセラティがまだデ・トマゾ傘下にあった80年代に4ドアの「ビトゥルボ430」を愛用していたが、ミッソーニのシートに木製のステアリング、棗(なつめ)の形をしたアナログ時計にツインターボのエンジンは、他のどんなクルマにも似ていなかった。当時の本社工場を訪れてみて、その古めかしさに驚いたことがあるが、それでもクルマはピニンファリーナのおとなしいデザインに似合わず、恐ろしく速かった。その落差、生活感のなさ、どこか浮世離れのしたたたずまいが魅力的だった。


 抜群の存在感

 現代のマセラティは、一回りも二回りも大きくなって、まぶしいほどだ。生活感のなさ、浮世離れしたたたずまいは相変わらずだが、「おとなしさ」は影をひそめ、どんと派手になっている。カブリオレになるとさらに存在感を増し、非日常性もぐっと際立つ。20インチの大径ホイールにパドルシフトを備えた6速ATは、もうそれだけで「滑空」しそうだ。オープン4シーターの開放感は、これくらいダイナミックな雰囲気を持つスタイルのほうが、むしろ自然に見える。
 いささか節約疲れが見え始めた昨今、そろそろ欲しかったクルマに素直になってもいい頃合いである。車両価格:18,500,000円(税込)
(Text/水木 康太郎 Photographs/飯田 健太郎)

 

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