World Walking Vol.8 Yogyakarta (ジョグジャカルタ) 精緻なレリーフが魅力的なバティックスタンプを3名様にプレゼント

見所の多いインドネシア共和国のなかでも人気の都市「Yogyakarta(ジョグジャカルタ)」。世界遺産のボロブドゥール寺院遺跡群やプランバナン寺院群などで広く知られています。さらに、インドネシアを代表する伝統工芸のバティック、スルタンが住む王宮「クラトン」など、独自の伝統と文化に触れる名所旧蹟がたくさんあり、バリ島やジャカルタともひと味違う古都の雰囲気を楽しむことができます。

旧王家がいまなお存続する特別な街

もともと、ジャワ島の中央に位置するこのエリアは、マタラム王国が隆盛を極め、統治していました。しかし、王位継承を争う結果、マタラム王国はススフナン家の統治するスラカルタ王国と、スルタン家の統治するジョグジャカルタ王国に分かれ、別々の歴史を歩むことになります。

20世紀に入り、当時占領下であったオランダからの独立の機運が高まると、ジョグジャカルタのスルタン家は民族主義派を支持し、独立を後押しします。こうした背景もあり、ジョグジャカルタはインドネシア共和国が独立を果たしたときは臨時首都として機能し、スルタン家に敬意を表して現在でも特別行政地域として王家の存続が認められているのです。インドネシア独立以前の歴史と、建国の歴史の中継地とも言えるジョグジャカルタは、こうして多様な文化を織りなしてきました。

独立戦争時の兵士を讃えたモニュメント。裏側は要塞の跡地を博物館に改装した「Museum Benteng Vredeburg」。

世界最大の仏教寺院「ボロブドゥール遺跡」

ジョグジャカルタには、世界遺産に認定された2大遺跡があり、そのうちの一つが「ボロブドゥール遺跡」です。世界三大仏教遺跡の一つであり、世界最大の仏教寺院でもあるこの遺跡は、およそ8世紀頃のシャイレンドラ朝時代に建てられたと言われています。ムラピ火山の大噴火による火山灰で埋もれ、さらに盆地の密林に覆われていたこともあり、1800年代まで忘れ去られていました。イギリス人のトーマス・ラッフルズによって発見されたことで調査や発掘作業が行われ、その姿が現代によみがえったのです。

遺跡の一辺はおよそ117m。全体で9層あり、下から5層が欲望を持った「人間の世界」、その上の3層が「死後の世界」、一番上の層が「天界(天国)」という、仏教の「三界の思想」をそのまま表現しています。さらに、一番下の「人間の世界」を表現する5層の外郭4辺にはそれぞれ108体の仏像が安置され、全部で432体あります。真ん中の「死後の世界」3層の外郭4辺には、釣鐘状のストゥーパの中にそれぞれ18体の仏像が納められ、全部で72体。すべての仏像を合わせると504体にものぼるのですが、ガルーダ・オリエントホリデーズのガイド、ダルトさんによると興味深い数であることがわかります。これはそれぞれの合計の数字を足すと9になり、縦方向にも横方向にも9という数字で成り立っています。これは仏教における完成を意味する数字で、曼荼羅などに表現されているもの。「ボロブドゥール遺跡」は、実は寺院全体が一つの立体曼荼羅を表現しているともいえるのです。

近くにはムンドゥ寺院やパオン寺院があり、これらの位置関係から、この一帯が複数の寺院群による巨大な仏教的寺院群であったとされ、1991年に「ボロブドゥール寺院遺跡郡」として世界遺産に登録されました。現在では仏教の聖地の一つとして、熱心な仏教徒をはじめ、年間100万人以上の観光客が訪れるパワースポットになっています。特に最上段から日の出を見るサンライズツアーは神秘的な体験ができるのでおすすめです。

いくつかのストゥーパからは穏やかな表情の仏像を見ることができる。

密林から望む姿は圧巻で、これが地中に埋もれていたとはにわかに信じがたいほど。

ご来光にあわせたツアーは事前に手配が必要。「ガルーダ・オリエントホリデーズ」が手配してくれたガイドのダルトさんは、日本語も堪能で文化や宗教にも造詣が深く、非常に丁寧に遺跡について教えてくれた。

遺跡までの道のりを懐中電灯の明かりだけで歩くのは、実に神秘的な体験。

真っ暗なうちに頂上へ到着。どのような景色に囲まれているのか、ほとんどわからない。

ご来光に間に合わせようと、続々と観光客が集まってくる。

辺りが明るくなるにつれ、徐々に遺跡が浮かび上がってくる様子はゾクゾクする。

シャッターチャンスを待ち構えて、ツーリストたちもそわそわしはじめる。

座禅を組み、瞑想をしながら日の出を待つ人たちも。

夜明けとともに遺跡の周辺が、山々とジャングルのような密林に囲まれた場所だということがよくわかる。

この日は遺跡の真正面から太陽が昇った。

太陽の姿が見えると、周囲ではため息のような歓声があがる。

ゆっくりと朝靄が晴れ、精緻なレリーフが複雑な陰影を描き出す。

全長5kmにも及ぶ回廊には、仏教の説話を伝えるレリーフが続く。

回廊には、1万人以上の人物がレリーフで描かれ、巧みな構図と緻密な石彫技術を見ることができる。

寺院全体が仏教的な宇宙観を象徴する曼荼羅を表現している。

仏像の結ぶ「印」について解説してくれるダルトさん。実に詳しい解説が興味深かった。

世界最大の仏教寺院と言われる荘厳な佇まいは、必見。

ヒンドゥー教と仏教が融合するプランバナン

そして、もう一つの世界遺産が「プランバナン寺院群」。こちらはプランバナン村にある遺跡群(ロロ・ジョグラン)の総称で、「プランバナン寺院」という場所があるわけではありません。ヒンドゥー教の寺院だけでなく、仏教寺院(チャンディ)も数多くあり、それらが融合して巨大な遺跡群を形成することで遺跡周辺全体が公園となっています。大地からそびえるロロ・ジョグランはインドネシア最大級とされるヒンドゥー教の寺院遺跡で、ボロブドゥール寺院遺跡群とあわせてジャワ建築の最高傑作のひとつです。また、遺跡公園ではプランバナン寺院群を背景にした幻想的な「ラーマヤナ・バレエ」も鑑賞することができ、ジャワ文化の中心地であるジョグジャカルタらしい体験として人気です。現在ではイスラム教の信者が多いジャワ島において、ヒンドゥー教と仏教の荘厳な遺跡が混在するというのは歴史の面白さを感じます。

まず目に飛び込んでくるのが巨大な3塔のロロ・ジョグラン。シヴァ神を祀った聖堂を中心に、左右のお堂へそれぞれブラフマー神とヴィシュヌ神が祀られています。そして、それぞれのお堂の前には神の乗り物が祀られたお堂が置かれ、この6つのお堂を中心に250基ほどの祠堂(しどう)が建てられていたそうです。これらのお堂が建てられたのはおよそ8〜9世紀ごろで、仏教遺跡であるボロブドゥール寺院とほぼ同じ時期。ガイドのダルトさんによると、当時のジョグジャカルタ地域では仏教を信仰するシャイレンドラ王朝が栄えていましたが、支配下にあったマタラム王朝はヒンドゥー教を信仰しており、それぞれが競って宗教建築を建てたことから、このような歴史的な2大寺院群が誕生したのではないかとのこと。

建築様式も宗教的背景も全く違う文化ですが、複雑で精緻なレリーフはどちらの寺院にも共通するもの。信仰が違えども、美しさを求める心はどちらも同じだったに違いありません。

夕景に沈むロロ・ジョグランは深みを帯びて一層迫力があった。

平地にそびえ立つロロ・ジョグランは、まるで天をさすよう。

平地にそびえ立つその姿は、まるで天をさすよう。

レセプションに置かれた模型。全体が広大な寺院群であることがよく分かる。

左が現在修復中の祠。そのおびただしい数に圧倒される。

シヴァ聖堂の回廊には、ラーマ王子が悪魔に連れ去られた妻、シータを救い出すインドの有名な物語「ラーマーヤナ物語」のレリーフが彫られている。

シヴァ聖堂に祀られるシヴァ神。この像の下9mほどにはマタラム王朝のラカイ・ピカタン王の遺骨が埋葬されていたと伝えられる。

こちらはシヴァ神の乗り物である聖なる雄牛の神「ナンディー」。

シヴァ神の息子「ガネーシャ」。他にもさまざまな神が祀られている。

シヴァ神の妻「ドゥルガー」の像。イスラム教徒の多いインドネシアにあってこの像の美しさは人気で、多くの参拝者が訪れる。

公園の敷地内にある野外シアターでは、乾季(4月〜10月頃)のみ「ラーマヤナ・バレエ」が鑑賞できる。プランバナンのロロ・ジョグランをバックに鑑賞する踊りは、きっと格別だろう。

王宮までの繁華街「マリオボロ通り」

「マリオボロ通り(Jalan Malioboro)」は、ツーリストで賑わう目抜き通りのひとつ。ジョグジャカルタ王国を収めていたスルタン家の住む王宮「クラトン」まで続く一本道で、観光客向けの露店がずらりと並んでいます。特別な行事の際にはたくさんの花で飾られたことから、サンスクリット語で「花飾り」を意味する「マリオボロ」と名付けられました。現在でも伝統的なアンドン(馬車)やベチャ(三輪人力車)が走り、昼夜を問わず賑わうメインストリートです。夕方になると「レセハン」と呼ばれる屋台のお店が登場します。それぞれ地面にゴザのようなマットを広げ、ナシゴレンやカレー、グドゥと呼ばれる伝統的なジャワ料理を出すお店が軒を並べるのです。

ファッションビルとして地元の人に人気の「MAL MALIOBORO」ではバザールのようなものを催していたり、バティックや民芸品、工芸品がマリオボロ通りのあちこちで売られたりして、通り全体が「喧騒とのんびり」が同居したアジア独特の空気に包まれます。一方で、王宮近くの「インドネシア銀行」と「中央郵便局」が入る建物など、立派なコロニアル調の歴史的建造物もあり、国家独立の直後に首都機能を支えていた威厳をうかがわせます。また、ジョグジャカルタで奏でられるガムランは、静かで落ち着いた上品な音色を響かせています。これは、王様の眠りを妨げないようにアレンジされたもので、王宮近くを歩いていると神秘的なガムランを耳にすることができます。街を歩くだけでなんとも不思議な気持ちになるマリオボロ通りと王宮周辺、散策にはぴったりですね。

伝統的な「アンドン(馬車)」から眺める景色は、また一味違った風情を楽しめる。

伝統的な「アンドン(馬車)」から眺める景色は、また一味違った風情を楽しめる。

通りにはバティックや工芸品のお店がずらり。お店によって柄や雰囲気も違うので、お気に入りを見つけてみては。
少し気だるそうな店員の女性。こののんびりとした空気感はアジアの繁華街独特のもの。
地元のトレンドを発信している「MAL MALIOBORO」というショッピングモール。1階では大規模なバザーが開催されていた。
「MAL MALIOBORO」のバザーで話したスタッフはみんなおしゃれ。シンプルな装いを褒めると、流行を発信するのも仕事だと話してくれた。
現在、マリオボロ通りは大規模な改修工事を行っていて、通りのあちこちで工事している姿を見かける。休憩時間にはみんなさまざまなゲームに興じている。
乾物などを買い求める地元のお客さん。この辺りではあまり外食の文化がないらしく、レストランなどはもっぱらツーリスト向け。
王宮(クラトン)そばに建つ白亜のコロニアル建築。立派な佇まいに、臨時首都だった往時の面影を感じる。
アンドン(馬車)と並んで活躍するのがベチャと呼ばれる三輪人力車。趣向を凝らしたデザインは見ているだけでも楽しい。

熱気に包まれる「プリンハルジョ市場」

アジアの繁華街を訪れたら必ず立ち寄りたいのが市場。ツーリストと地元の人が入り混じることで、その土地の文化や雰囲気がよく伝わる場所の一つです。マリオボロ通りを南に向かうと、左手に現れるのが「プリンハルジョ市場」。緑の外観のなかは3階建ての広大な敷地で、奥へと果てしなく露店やお店が続きます。料理や食材の香りと圧倒的な物量は、不思議と心が浮き立つものです。食堂などもあるので、グドゥやサテなどをつまみながらローカルの雰囲気を楽しむのも楽しいですね。

さらに、市場の脇道もまるで縁日のような賑わいで、生活雑貨や古物商、屋台、花屋と様々なお店が並びます。とくに興味を引いたのがバティックの模様をロウ付けする際に使う「バティックスタンプ」のお店。露店のようなお店には、緻密なバティックの模様が模られた大小様々なスタンプがずらり。あくまでお土産用とのことですが、そのレリーフは見事。いかにもジャワ文化の中心地らしい工芸品に出会うことができます。置物としてもなかなか迫力があるので、気に入った柄を探してみてはいかがでしょうか。

市場の入り口の幅はそれほどでもないが、奥が果てしなく長い。

1階は布や洋服、2階は食品、3階は雑貨と大まかに分かれ、いたるところにお店がある。
サンスクリット語で「花かざり」を意味するマリオボロだけあって、生花がとても鮮やかでいい香りを放っていた。
こうしたローカルフードを片手にビールを飲みながら市場を散策すると、その街に溶け込んだような不思議な心地よさに包まれる。
市場の脇道も縁日のようにさまざまなお店が並ぶ。覗いて歩くだけで実に楽しい。
古銭や古本など、雑然と並べられた商品から掘り出し物を探すのが楽しい。
こちらが「バティックスタンプ」。緻密な模様が実に美しい。
ご主人曰く、職人が調整すれば実際にバティックのロウ付けに使えるとのこと。

ディープなインドネシアを感じる街

マリオボロ通りの北端には「ジョグジャカルタ駅(トゥグ駅)」があり、ジャカルタやスラバヤからの長距離急行列車が停まるため、駅前通りとしても賑わいます。駅周辺からは夜行バスなども発着し昼夜を問わず大勢の人が行き交い、ジャワ島の東と西をつなぐ中継地点として栄えてきました。また、ジョグジャカルタは国立大学のガジャ・マダ大学をはじめ、ジョグジャカルタ大学などの優秀な大学も多く、教育学園都市として地方から優秀な学生たちが集まる街でもあります。

今回ご紹介した場所以外にも、さまざまな寺院や美術館などの名所が数多くあり、文化と歴史が交錯したインドネシアの発展を垣間見ることができる街の一つです。ローカル色の濃いジョグジャカルタは、バリ島などと違いタクシーなどの手配は不便な場面もありました。街歩きなどの自由な時間を満喫しつつも、効率良く目的地をめぐりたい方は、事前にツアーやガイドチャーターなどを手配したほうがより楽しめると思います。遺跡をめぐって悠久の時に思いを馳せ、屋台やワルンでローカルフードに舌鼓を打ちながら現地の人たちと交流をするなど、より一層インドネシアの奥深さを知ることができるはずです。見所の多いインドネシアにあって、今なお人気を誇る古都、ジョグジャカルタ。ぜひ、訪れて街を散策してみてはいかがでしょうか。

鉄道からバス、ベチャ、アンドンなど、多様な交通手段があることからも、ジャワ島の中継地点である古都がうかがえる。

マリオボロ通りの北端の交差点にある「トゥグの塔」。街のシンボルであり、はるか北はムラピ山を示し、南は王宮を示す道標でもあるそうだ。
屋台では雨宿りがてら地元の人との交流も楽しめる。
マリオボロ通りを一本入ると、ホテルやレストランが並ぶ。
街では学生らしき姿も見かける。
バスを利用するのも学生が多い印象。
街中ではチェスをやっている大人をよく見かけた。みんなゲームは好きな様子。
ベチャの上で気持ちよさそうにお昼寝。
ジョグジャカルタ駅では、急行が到着すると人で溢れかえる。
●この記事に関するお問い合せ
株式会社ゾディアック Libera編集部
Tel. 03-6380-0530 info@zodiac1987.com
●インドネシア観光に関するお問い合せ
ガルーダ・オリエントホリデーズ・ジャパン(株)
Tel.03-5288-5672 http://www.garudaholidays.jp/
●読者プレゼントのお知らせ
エントリー期間中、セゾンカードを1,000円(税込)以上ご利用のうえエントリーいただいた方の中から抽選で3名様に、精緻なレリーフが置物としても魅力的なバティックスタンプをプレゼントいたします。〈詳細〉
手作り品のため、種類によりサイズが異なります。
平均サイズ/柄面:約6cm×約20cm 奥行き:約8cm
※柄はお選びいただけません。あらかじめご了承ください。
※現地で買い求めた手作り品の古い物ですのでサビが出ており、バティックスタンプとしての使用はできません。観賞用オブジェとしてご利用ください。エントリー期間:2017年2月17日(金)〜3月24日(金)※当選者の発表は、賞品の発送(2017年4月中)をもってかえさせていただきます。

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