展覧会史上初! 全4巻全場面、一挙公開! 特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」

国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

京都・栂尾山(とがのおさん) 高山寺(こうさんじ)が所蔵する国宝「鳥獣戯画」は、約800年前に描かれた彩色のない白描の絵巻。誰が描いたものか、どのような経緯で高山寺に伝えられたものか不明だが、わが国で最も有名な絵巻の一つであろう。今回は合計44mを超す全4巻の全画面を、全期間を通して巻き替えなしで一挙に見ることができる稀有な機会。高山寺を再興した明恵上人にまつわる品々も見ることができる。

国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

謎多き作品

国宝「鳥獣戯画」は、教科書で習うので、わが国では最も有名な絵巻の一つであろう。ところが、誰が、何のために、いつ描いたものか、詳しくはよく分かっていないのである。しかも、なぜ高山寺に伝えられたのか、仏教の教えとどのような関係があるのか、作品に文字が1つも見当たらないので、そのことすらも分からないという、実に謎多き絵巻なのである。長らく鳥羽僧正筆とされ、そのように習ってもきたが、全4巻の構成が12世紀半ばから13世紀の長きにわたり、筆致も一人の作とするには無理があるところから「確証」が得られず、現在は作者不詳とされている。それでも古今東西、類似の作品は見当たらず、優れた作品との評価に揺るぎはない。

国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 乙巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 乙巻(部分) 平安時代 12世紀 京都・高山寺 通期

全長44mの巻物を一気に展示

今回の展覧会では、甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を、巻物の特性に合わせて、映画のフィルムでも見るように、長さ44mにわたって一度に見られるようにしたことだろう。しかも、断簡や模本なども可能な限り集結、文字通りの「すべて」である。しかも、これほど大規模に鳥獣戯画の作品を展示できる会場は他に見当たらず、恐らく二度と見られない規模と内容の展覧会になることだろう。鳥獣戯画はこれまで、甲巻の一部が広く注目を集めてきたが、乙巻、丙巻にも見所のある場面は多い。ついじっと見つめたくなるが、今回は「動く歩道」を設置して、ゆっくり動きながら鑑賞できるようにするそうなので、どのような仕組みになるのか楽しみだ。

国宝 鳥獣戯画 丙巻(部分) 平安~鎌倉時代 12~13世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 丙巻(部分) 平安~鎌倉時代 12~13世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 丁巻(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期

国宝 鳥獣戯画 丁巻(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期

明恵上人と高山寺

さらに、鳥獣戯画を所蔵する栂尾山高山寺と、開祖の明恵上人(みょうえしょうにん)にスポットを当てている点も注目される。高山寺の創建は奈良時代といわれているが、鎌倉時代初期に明恵上人が後鳥羽上皇より寺域を賜り、華厳宗の道場として寺を再興している。いわば学問寺として発展してきたもので、今も貴重な文化財が数多く伝承されている。明恵上人は、日本で初めて茶の栽培に成功した人、女性の救済に力を尽くした人、生涯にわたって夢を記録し続けた著書「夢記(ゆめのき)」などで知られる。今回は「秘仏」として位置付けられている「明恵上人坐像」の公開や、身辺に置いて愛玩した「子犬」像、所有していた「龍子(たつのこ)」なども公開され、その人柄を忍ばせる。

重要文化財 鳥獣戯画断簡(東博本) 平安時代 12世紀 東京国立博物館 通期

重要文化財 明恵上人坐像 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期

重要文化財 子犬 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 通期

「2020東京五輪」との同時期開催を

それにしても、鳥獣戯画はまことに不思議な作品である。その出自や来歴もさることながら、絵そのものに興味を惹かれる。筆と墨だけで、擬人化したウサギやカエル、サルなどを巧みに描き分け、まるで人間のように躍動している。当時は、左手で巻物を開き、右手で巻き上げながら画面を追い、正面の場面を追ったことだろう。それはそのまま、現代のアニメーションではないだろうか。しかも、その内容が笑いと諧謔に満ち、思わずこちらの頬が緩む。誰かを風刺したようでもなく、時の政権を笑いのめしたふうでもなく、ただ子どもたちが生きることを楽しんでいるように無心に描かれている。そこに普遍性があるのだろう。ある種の日本人の心性を海外の人たちにも知ってもらう意味で、「2020オリンピック/パラリンピック」と同時期に開催して欲しかった。

龍子 京都・高山寺 通期

国宝 華厳宗祖師絵伝 義湘絵(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 前期

国宝 華厳宗祖師絵伝 元暁絵(部分) 鎌倉時代 13世紀 京都・高山寺 後期

●特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」
会場:東京国立博物館 平成館(東京・上野公園)
会期:2020年7月14日(火)〜2020年8月30日(日) →2021年春に開催予定
当日券:一般 1,700円 他

2020年7月14日(火)から8月30日(日)まで開催予定の特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、展覧会準備を当初の予定通り行うことが難しい状況となったため、会期を変更することにいたしました。
延期後の開催日程につきましては2021年春を予定しております。
本展の詳しい会期や関連イベントなどの予定は、あらためてお知らせいたします。

●展覧会への問い合わせ
Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://chojugiga2020.exhibit.jp/
※開館時間、休館日、観覧料、割引制度、特典チケットなど、詳細については上記の公式サイトをご参照ください。
●読者プレゼントのお知らせ
2020年4月17日(金)〜5月25(月)の期間に募集していた、特別展「国宝 鳥獣戯画展」ペア観覧券プレゼントキャンペーンですが、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、会期の急な変更や中止などが考えられるため、キャンペーンを中止とさせていただくこととなりました。
キャンペーンにご参加いただいた方々には大変申し訳ございませんが、ご了承いただけますと幸いです。
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