World Walking Vol.22 Around the TAIWAN —Hualien— 台湾花蓮の陶器ブランド「HUNSHEN」の作品を3名様にプレゼント

台湾の奥深い魅力をご紹介する「Around the TAIWAN」。前回は台湾最古の街「台南市」と、最南端のビーチリゾート「墾丁(ケンティン)」をご紹介しました。今回は台湾の東側を巡り、のどかな風景とクリエイティブな雰囲気が織りなす「花蓮(ファリエン)」の魅力と、雄大な自然に原住民族文化が残る「太魯閣(タロコ)渓谷」をご紹介します。

のどかで穏やかな街「花蓮」

台北から特急列車で2時間ほどの街「花蓮」。大理石の産地でもあり、台湾でもっとも空がきれいと言われるほど豊かな自然が広がります。また、アミ族やタロコ族、タイヤル族など、台湾固有の原住民族文化も色濃く残り、「東大門夜市」や「太魯閣渓谷」周辺で、原住民の伝統料理などを体験することができます。一方で、都市から戻ってきた若者たちによるこだわりのカフェやクラフトメーカーも増え、新たな魅力に注目が集まっている街でもあります。

独特のゆったりとした空気が流れる海と山に囲まれたこの街は、まるで街全体がパワースポットのような不思議な感覚に包まれます。時間のある方は鈍行列車でゆっくり訪れると、市街地とはまたひと味違う台湾の魅力を満喫することができるでしょう。

太魯閣国家公園の近くにある清水断崖の景色は、海から立ち上がる垂直の絶壁とどこまでも続く水平線がダイナミックなコントラストを見せている。

小確幸を体現するアーティスト

この街の魅力の一つに、海外や大都市で過ごした後に「小確幸(小さいけれど確かな幸せ)」という新しい価値観が生み出す新しいカルチャーがあります。

今回ご紹介する「魂生製器(HUNSHEN)」もそのひとつ。
花蓮出身の張靚妤(Gina Jhang)さんは、ろくろを使って器を制作し、器のデザインも担当。3年前まで中国で広告代理店のクリエイティブディレクターとして活躍していました。しかし、大都市での暮らしやWEBなどを中心としたコミュニケーションの手法に寂しさを感じ、故郷である花蓮での穏やかな暮らしを求めて戻ってきました。「花蓮には豊かな自然や四季折々に移ろう景色の美しさがあります。都会での暮らしに少し疲れていた私は、あるとき無性に故郷であるこの街が恋しくなりました。そして、この街の素晴らしい自然からインスピレーションを得て、人々の暮らしに彩りを添える制作活動をしたいと思うようになり、手作りの器を作ることにしたのです」と、ブランドの誕生について話してくれました。

ギャラリーは中心地から少し離れた住宅街にあり、落ち着いた雰囲気の建物は上階がアトリエになっている。

デザインと制作を担当する張靚好さんの落ち着いたたたずまいは、作品の柔らかい雰囲気に通じる。

店内はシンプルでモダン。さまざまな作品がカテゴリーごとに並べられている。

クラフトワークのサードウェーブ

独特な柔らかい色合いを表現する釉薬の配合と、器の焼成を担当するパートナーの端木悐如(Twanmoh)さんに、どこで修行をしたのか尋ねると、驚くことに二人とも動画サイトやWEBからの情報をベースに作陶の基礎を学んだといいます。「私たちはもともと調べ物をしたり実験を重ねたりして、失敗から検証を繰り返すのが得意でした。すでにブランドのイメージは明確だったので、少しずつ必要な道具をそろえ、色々な材料を試しながら試行錯誤していくことで、どこにもない、これまで誰も作ったことのない器を生み出すことに成功したのです」と話すように、わずか2年で海外のホテルなどからオーダーが入るまでに成長しました。伝統工芸とクリエイティビティの融合は、台湾クラフトの新しい流れを感じさせます。

その作品の一部をご紹介しましょう。

ご主人でありビジネスパートナーでもある端木悐如さん。優しい表情で物静かだが、作品に対する姿勢は真摯で意欲的だ。

こちらはホテルやカフェからのオーダー用に用意された釉薬のサンプル。器自体、このままシリーズ化してほしい完成度。

制作の様子は真剣そのもの。堂に入った姿はとても独学とは思えない。

自然からのインスピレーションを大切にした作品たち

初期の作品である植物をモチーフにデザインした「Textured(テクスチャー)」シリーズは、あるカフェからのオーダーでデザインしたもの。花蓮や台東でよく見る植物を美しく削り出し、素朴な土の温もりを感じさせる作品に仕上げました。

大きめの飲み口はコーヒーやお茶の柔らかな口当たりと香りが楽しめる。
こちらは器のシリーズもあり、繰り返される模様は手作業と思えない精密さ。
さまざまなパターンのモチーフが並ぶと、すべて揃えたくなる。
ソーサーとしても使えるプレートとカップの組み合わせが、ティータイムに彩りを添えてくれる。

花蓮の四季を彩る草花を表現した「Wild Flowers(ワイルドフラワー)」シリーズは、タンポポや食用にも用いられる金針花(ワスレグサ)といった可愛らしい植物がモチーフ。エンボスのような不思議な模様の付け方は企業秘密とのことですが、はかなげな色味と質感はどんなインテリアにも合いそうです。

タンポポをモチーフにしたデザインは柔らかな色合いが可愛らしい。
鮮やかな黄色が美しい金針花のシリーズは、大小揃えて使いたい。
カップの底にも模様がエンボスされ、滑り止めとして機能する。
こちらもプレートはお皿として使えるだけでなく、カップのソーサーとしてもちょうど良いサイズ。

深みのあるブルーが目にも鮮やかな「NightSky(ナイトスカイ)」シリーズは、海に訪れる夜明けの瞬間を表現した作品。このシリーズは先日、東台湾エリアのブランドで唯一、国立台湾工芸研究開発センターが主催する「TAIWAN GOOD CRAFT 2018」のアワードを受賞しました。器の厚さはわずか1mmと非常に薄く、軽いのが特徴。視覚的にも高台の無いデザインが独特の浮遊感を感じさせます。ハンドクラフトで均一に薄く仕上げるには高い技術力が求められ、独学だからこその個性的なたたずまいは見事です。

光の当たり方や見る角度で色合いが変わり、見ていて飽きない。
この薄さに仕上げるには、高い技術力が求められる。その軽さや使い心地が実に気持ちいい。
少しだけ持ち上がった高台のデザインが独特の浮遊感を与えている。
花蓮の海から陽が昇る直前の空をイメージしていて、それぞれ色合いが微妙に違う。
カップとプレートは組み合わせても良し、別々に使っても、また良し。

さらに、独自の製造方法で特許を取得したり、海外のホテルとテーブルウェアのコラボレーションをしたりするなど、グローバルに展開している「魂生製器(HUNSHEN)」。台湾の新世代クリエイターとして、ますます活躍が楽しみなブランドです。

ギャラリーの随所に彼らの美意識が宿っている。

林禹均(Yuchun Lin)さん(右)は国立東華大学でアートを学び、首席で卒業。インターンを経て、現在は魂生製器のメンバーとして活躍中。

魂生製器は「無限に続く魂」を意味している。

豊かな自然の恵みを感じる食体験

花蓮にはこうした「小確幸(シャオチュシン) ※注」を体現する新しいクリエイティブの芽がどんどん生まれています。本屋をリノベーションしたカフェ「時光1939」は、台湾のベジタリアンフード「素食」をモダンにアレンジしたメニューが人気。新鮮な野菜を使ったヘルシーな料理求めて、地元のお客さんで賑わっています。海沿いのロケーションに建つ「原野牧場」は、新鮮なヤギのミルクを使ったメニューが特徴のカフェ。ロッジを改装したような店内は天井が高く、大きな窓から見える海が室内にいることを忘れさせてくれます。

台湾では、新築するよりも古い建物を改築する方が政府のサポートが手厚いため、高感度な若者たちは良いロケーションにある古い物件を探し、自分たちの手でリノベーションしています。雰囲気の良いカフェやショップにリノベーション物件が多いのはこうした制度が影響しているそうで、古い文化と新しいトレンドが独特の心地よさを生み出しています。

※注:「小確幸(しょうかくこう)」は、作家:村上春樹が著書『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた (新潮文庫)』の中で用いた造語。「小さいけど、確かな幸福」を略して単語化したもの。村上春樹の書籍は世界で発売されているが、「小確幸」の表現は特に台湾で流行した。

「時光」とは、時間を意味し、時の流れなどを大切にする価値観が現れているネーミングだ。
ボリュームのあるランチプレートは素朴な味わいで、お腹も心も満たされる。お店で毎日焼かれるパンも絶品!
「時光1939」の近隣にはロースターを備えたコーヒーハウスや植栽の美しいカフェなどが並び、独特の文化圏を形成している。
海を望む「原野牧場」には心地よい風が吹き、実に開放的でゆったりとした時間が流れる。
この景色を窓から眺めて過ごすコーヒータイムは至福のひととき。
新鮮なヤギのミルクを使ったミルクシェイクやカフェオレは、臭みもなく柔らかな甘みが特徴。
庭のヤギは、立派な角と毛艶からも大切に大切に育てられていることがわかる。

人と文化が往来した場所

こうした新たなムーブメントと対比する自然や歴史を見ることができるのが、太魯閣渓谷を擁する「太魯閣国家公園」と「東西横貫公路」。太魯閣渓谷は花蓮県だけでなく、台中県、南投県にまたがる広大な渓谷で、全長約55kmに及ぶ「立霧渓」が大理石の地層を長年にわたって浸食し続けたことで生まれました。また、公園内に伸びる「東西横貫公路」は、台湾の東西を結ぶ唯一の自動車道。台湾の背骨に当たる中央山脈を横断する全長200kmの道路は、長年にわたって人々が山を掘り、岩を削ってつくり出したものです。「雨だれ石をもうがつ」「一心岩をも通す」の言葉をそのまま表した景色は、人と自然が織りなす悠久の時の流れと、人々の強い意志を感じずにはいられませんでした。

現在は多くの観光客で賑わうこの場所も、東西横貫公路を開拓した人々があってこそ。その信念の強さに思いを馳せずにはいられない。

圧倒的な自然の迫力

この道路を中心に、いくつかのトレイルコースが用意され、「長春祠」の滝や、絶壁に巣を作る数種のツバメが飛び交う「燕子口」を望むことができます。また、「白楊歩道」を行くと、澄み切った「立霧渓」のせせらぎ、様々な地層が織りなす複雑な岩肌の表情、そして「白楊吊橋」を渡ると「白楊瀑布」へとたどり着きます。降雨量などによって滝の水量などが変わってしまうようで、今回はそれほど大きな滝の迫力を感じることはできませんでしたが、四季折々の表情と歩くたびに移り変わる雄大な景色は格別です。なによりも、秘境ともいうべき場所で文化を育んできた原住民の歴史に畏敬の念を感じます。

圧倒的なスケールのパノラマが広がる「燕子口」。自然の偉大さを前に、自分の存在の小ささを感じさせられる。
絶壁に空く小さな穴は地下水脈の跡で、立霧渓が削るまでは地中にあったことを意味する。
この道を人が掘ったかと思うと、畏敬の念を抱かずにはいられない。
人気のルート「白楊歩道」は、長いトンネルを抜けていく。その先に広がる景色とのコントラストは、実に美しい。
トンネル内には明かりが無く、なかなかスリリングだ。
暗闇を抜けると美しい自然が広がり、実にドラマチックな体験ができる。
白楊瀑布は雨量が少なく、残念ながらその迫力を感じることはできなかったが、切り立つ断崖絶壁だけでも一見の価値がある。
東西横貫公路の工事で亡くなった方々を祀った「長春祠」で手を合わす。

原住民族のプリミティブな文化に触れる

そもそも台湾には、中央集権的な強大な権力は存在せず、数多くの原住民族が共存して生きてきた長い歴史があります。 そのため、少数の部族も含めると、実に多様な言語、文化が存在します。現代の台湾社会にもこうしたルーツを持つ人たちは多く、それぞれの出身をとても大切にしている印象を受けます。太魯閣国家公園のビジターセンター付近では、原住民族によるクラフトマーケットが開催されていて、気さくな人柄に触れることができました。鮮やかで抽象的な模様は美しく、アクセサリーや洋服にも活かされています。特に、手織り物の風合いは柔らかく、模様や色彩に込められた意味など、興味は尽きません。

そんな原住民族の文化を身近に感じるなら、伝統的な料理を体験するのが一番でしょう。 素材や調理法など、各部族の違いがあるので色々と試してみるのも面白いと思います。太魯閣周辺には、ローカルな雰囲気満点のなかで山豚や地鶏を使った本格的な原住民族料理を味わえるお店もありますし、「東大門夜市」の原住民エリアでは、竹筒で蒸した餅米など、素朴な味を気軽に楽しめます。素材を活かしたシンプルな味付けは親しみやすく、自然の恵みをいただく喜びを感じます。

ビジターセンターのそばで催されていた原住民族によるクラフトマーケット。
マーケットにいた原住民族の女性は、伝統的な織り柄などについて丁寧に説明してくれた。
花蓮市内にある「Wata」は、原住民族のアーティストによる作品などを展示、販売している。
モダンなデザインで、日常使いやインテリアのアクセントにしたくなるアイテムも多い。
店舗の奥はアートギャラリーとして多様な作品が展示されている。
「達基力風味餐廳」では野趣あふれる店内で原住民料理をいただける。
素材の味を活かした料理はクセが無く、日本人の舌に合う料理が多い。
花蓮市内の「東大門夜市」には原住民料理のエリアがあるので、まずは気軽に立ち寄ってみたい。
竹筒で蒸された餅米や腸詰めなどをスナック感覚で手軽に味わえるのが嬉しい。
天井に飾られるフラッグはさまざまな部族の伝統的な模様。独特な織り柄が興味深い。

次回は台北をハブに烏来(ウーライ)、宜蘭(イーラン)へ

さて、次回は「Around the TAIWAN」の最終回として、台北市を中心に温泉地としても有名な「烏来」、そして世界中で高い評価を得ているディスティラリー「KAVALAN」に注目が集まる「宜蘭」などをご紹介します。都市としての台北の面白さだけでなく、様々なエリアへのハブとしての魅力もご紹介しますので、どうぞお楽しみに!

宜蘭ではパラグライダーを体験できるスポットもご紹介。

※原住民という表現について:日本では差別的な表現になるため、元々その地で暮らしていた人々のことを「原住民」ではなく「先住民」と表現するのが主流になっております。しかし、台湾では「先住民」という言葉には「すでに消滅してしまった現在は存在しない民族」という意味があり、元々その地で暮らしていた人々のことを「原住民」と表現しています。Liberaでは台湾の表現にあわせ「原住民」という表現を使用しております。

<取材協力:柘植亜美(Ami TSUGE)>
2013年に初めて訪れた台湾でその魅力に感動。
現在では台湾公式のインスタグラマーとして、台湾鐵道で台湾を一周するなど、独自の視点で台湾の魅力を発信している。
Taiwan Creative Culture Magazine/PB by Plum Bloom
Instagtram/https://www.instagram.com/ami.plumbloom/

●他のWorld Walking Around the TAIWANの記事はこちら
World Walking Vol.21
Around the TAIWAN —Tainan & Kenting—
https://www.e-libera.com/travel/2018/09/worldwalking21/

●この記事に関するお問い合せ
株式会社ゾディアック Libera編集部
Tel. 03-6380-0530 info@zodiac1987.com
●読者プレゼントのお知らせ
読者プレゼントにエントリーいただいた方の中から抽選で3名様に、台湾花蓮の陶器ブランド「HUNSHEN」の作品をプレゼントいたします。

〈詳細〉
応募の際に、3種類から希望の賞品をお選びください。
それぞれのプレートはソーサーとしてもお使いいただけます。

A・写真左上「Wild Flowers」シリーズ
カップ(サイズ:D 8.5cm/H 6cm)
プレート(サイズ:D 13cm/H 2cm)

B・写真左下「Textured」シリーズ
カップ(サイズ:D 9.5cm/H 5.5cm)
プレート(サイズ:D 14.5cm/H 2cm)

C・写真右「NightSky」シリーズ
カップ(サイズ:D 8.5cm /H 5cm)
プレート(サイズ:D 14cm/H 2cm)

※手作り品のため、サイズは多少異なります。
※カップのサイズ:D には持ち手の寸法は含まれておりません。

2018年10月17日(水)〜2018年11月26日(月)

※応募資格:エントリー期間中に、セゾンカードを1,000円(税込)以上ご利用いただいた方。
※当選者の発表は、賞品の発送(2018年12月中)をもってかえさせていただきます。
※(株)クレディセゾンが実施するほかのキャンペーンとの重複当選はございません。

エントリーキーワード/台湾一周
エントリーはこちら

test single
test single