長期滞在型アートレジデンス アートビオトープ那須 「アートビオトープ那須」のペア宿泊券(朝食付き)を1名様にプレゼント

2018年6月にオープンした石上純也氏設計の「水庭」。自然にできた森のように見えるが、どの角度から見ても木が重ならないよう綿密に計算されている。

2017年8月、那須・横沢地区にあるブティックリゾート「二期倶楽部」が、惜しまれながら30年の幕を閉じた。創業者・北山ひとみさんが手塩にかけて育てた”伝説のリゾート”である。その隣接地にあるのが、同じ北山さんが手がけるアートレジデンス「アートビオトープ那須」。石上純也氏設計の「水庭(Water Garden)」が脚光を浴び、坂 茂(ばん しげる)氏設計のスイートヴィラも建設中。これからどのような「北山ワールド」を見せてくれるのか楽しみだ。

元は二期倶楽部の開業20周年を記念して開設された施設。アーティストの滞在制作を支援するプログラムやオープンカレッジ「山のシューレ」などが開催されている。

自分を空っぽにするところ

筆者にとってのリゾートは「Re-sort(リ・ソート)」である。つまり、ソート(Sort分類)し直すことだ。リゾートの語源というわけではないが、この考え方がどうもぴったりくる。リゾートに滞在しながら、これまでの来し方行く末をぼんやり考えながら、「これまでのところ、果たしてこれでよかったのか?」と、こころ静かに内省する。よくなければ「さて、これからどうするか」といったことを脈絡なく考え続けるのである。そうして、自分を空っぽにしていきながら、仕事への飢餓感が芽生えたら「よし、やるぞ!」とリゾートから元気をもらうのである。

友人の別荘にでも遊びにきたかのような雰囲気で、構える必要がない。
庭に据えられたオブジェは、ここで制作していったアーティストたちの作品とか。
スタッフや滞在客のマスコットになっている「フーガ」は、イノシシ除けのワナで右の前足を失った元保護犬。
館内のいたるところに気持ちよく過ごせるスペースが用意されている。
入り口には、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、アート支援に協力する企業各社の社名が記されている。
午後の閑散とした時間が、まったりとした気分を誘って気持ちがいい。

理想の宿を追って

そうなると、あれこれ忙しくアクティビティをこなす近頃のリゾートよりも、終日プールサイドで寝転んでいられるリトリート(隠れ家)タイプの静かで小さな宿の方がふさわしいかもしれない。ヴィラが点在するかつての二期倶楽部のようなリゾートを「リ・ソート」するために活用してきた滞在客も多かったに違いない。オーナーの北山ひとみさんがどのような事情で二期倶楽部を手放されたのか知る由もないが、隣接する「アートビオトープ那須」を拠点に「横沢アートコロニー」を実現するという理想を追い続けているとあっては、何としても滞在してみたくなる。

ガラス張りのラウンジは、本を読んだりおしゃべりをしたり、気ままに過ごせる気持ちのよい空間。
本は終生の連れ合い。つい手に取って読みたくなるような書籍がふんだんに用意されている。
よく見るとデンマークのルイスポールセン社の照明器具やフリッツ・ハンセン社の名品「エッグチェア」などが使われており、センスの良さがうかがえる。
「芸術」というと途端にいかめしくなるが、「アート」といわれたら気軽に楽しんでもいい気がしてくる。
滞在アーティストが残していったウォールペインティング。モチーフは「水庭」だろうか。
ショップにはスタジオで制作されたさまざまな作品が展示されており、さながらミュージアムショップのよう。

実用本位のレジデンス

アートビオトープ那須は、二期倶楽部創立20周年記念の文化事業として2007年にオープンしている。那須・横沢の自然の中で長期滞在しながら、心ゆくまで制作に励めるように、本格的なガラススタジオと陶芸スタジオを備えた、いわばアートコロニーである。客室数も20室程度に抑えてあり、キチネット付きとはいえ、スペースもそれほど広いわけではない。全体に無駄を省いたシンプルな構成で、実用本位に作られている。客室に籠っているよりも、外に出ることでむしろ一般ゲストとの思わぬ出会いの場を得て喜んでいるアーティストもいるかもしれない。

客室は、ここで制作に励むアーティストのために長期滞在を意図したつくりになっており、いたってシンプル。
寝心地のいい清潔なベッドと、かすかなせせらぎの音が深い眠りを誘う。
リネンやタオル類も清潔で使い心地がいい。
決して広い客室とは言えないが、くつろぐには十分。奥に見えるのはフリッツ・ハンセンのスワンチェア。
客室内にはちょっとしたキッチンスペースがあり、簡単な調理もできる。館内にはランドリーの設備もあり、ここで「暮らす」こともできそうだ。

自然の叡智から人の叡智へ

北山ひとみさんがここに作ろうとしているのは「ボタニカルガーデン アートビオトープ」だという。「2008年から開催してきたオープンカレッジ〈山のシューレ〉は『自然の叡智から人の叡智へ』をテーマにしてきました。〈水庭〉はその成果物です。美しい自然は寡黙ながら強靭です。木々の乾いた幹の中からひとりでにみずみずしく膨らんでくる冬芽があるように、自然のなかにいると人間にも過ぎ去った年月の中からさまざまな思い出が伸び上がり語り掛けてくれます。自分の意志とは関わりなく、溢れ出る人間の精神に内包された〈魂〉のようなものに触れたときの喜びに勝るものはありません。私たち人間は、自然を母体にして生かされてきたことを真摯に受け止めないといけません。ここでは、21世紀を生きる人間のヒントを見つけて頂ければと思います」と語る。

「水庭」の見学希望者には「ランチ付き水庭鑑賞プラン」があり、25マイル圏内で採れた野菜を中心としたメニューを用意している。
ディナーにはコース料理がおすすめ。ベースは和食だが、近隣の食材を生かした、テロワール(土壌)を感じさせる郷土料理の要素を盛り込んでいる。
採れたての地元の野菜をふんだんに使ったサラダは、「野菜の力」を感じさせてパワフル。
これは和食、それともフレンチ? そんな境界などどうでもよくなる大らかな味わい。
「人はパンのみにて生くるものにあらず」というが、このパンなら、パンのみでもよいのではないかと……。
朝食は、庭を眺めながらのアットホームな大皿スタイル。
好みのものを、それぞれ少しずついただく。
おーっと、二期倶楽部ゆずりの評判の和朝食、滋養卵「純」を発見。大田原産コシヒカリにかけていただく「卵かけご飯」は出色。濃厚な味わいながら、するりと喉を通っていく。
二期倶楽部のレストランから移ってきたシェフの石倉聖二(しょうじ)氏。寡黙で照れ屋。毎朝、義足を着けたフーガと元気よく走っている。

建設予定地の樹木を移植

こうした思いから、エリア内にガーデンレストランを作り、宿泊施設として“天と地を繋ぐ”スイートヴィラ15棟を建てることにしたのである。しかし、そうなると建設予定地の樹木を切らなければならない。那須の自然をブランドの源と捉え、育んできた横沢の森を守るために考え出されたのが、敷地内の全ての樹木をそっくり移植すること。「そっくり」なので、枝も根も土も、丸ごとそっくりである。そのため、すぐ近くへの引っ越しにも関わらず、移植に丸4年もかかったという。

アートビオトープ那須を象徴するのが、皇室の方々も訪れるという本格的な設備を誇るガラススタジオ。インストラクターのサポートを得ながら、オリジナルの作品作りに挑戦できる。
1,200℃の窯の中で溶かされたガラスの種を吹き竿に巻き取り、息を吹き込んで作るのが吹きガラス。
トンボ玉作りやマドラー作り、サンドキャスト、サンドブラスト、切子体験など、ガラス制作に必要な素材や道具は全て揃っている。
陶芸スタジオでは、陶器の制作から絵付け、電気炉による焼成まで、一通り体験できる。
「生活アートを自由に楽しんでいただきたい」とオーナーの北山ひとみさん。固定観念や既成概念にとらわれない自由な発想がこの人の持ち味。
庭内の各所にスタジオで制作された作品が展示されている。どんなにAI(人工知能)が進化しても、彼らにアートは作れない……。

建築家・石上純也に注目

移転先は水田や牧草地として利用されてきたところだが、元をたどれば森だった。北山さんが建築家の石上純也氏に相談したところ、「過去を取り込みながら、これまで誰も見たことのない庭を作ろう」となった。つまり、そこに森林があり、水田があり、牧草地があったという土地の記憶である。こうして綿密に計算された庭園としての「水庭」は、「水の中に木が立つ」不思議な光景を現出させた。木々と池によって創り出された独特の空間の中に身を置くと、これはまぎれもない「建築作品」であり、同時に、これまで誰も目にしたことのない作品、つまり「人の叡智によって生まれたアート」ということが実感できるだろう。

さまざまなメディアから大きな注目が寄せられている「水庭」。樹種はすべて落葉樹。その数318本、広さは16,670㎡。
大小160の池(ビオトープ)はすべてパイプを通じて繋がっており、上黒尾川の取水枡から取り入れた水は再び上黒尾川に戻される。
池の水が絶えず移動していることは、時折、埋め込まれたパイプから、わずかに水が吹き上がることで分かる。
飛び石が1列に並んでいるところは足元に意識を集中。多くの石が置かれた歩きやすいところでは周囲の景色に目を向ける。「緊張と解放」が自然に生まれる。
どこから見ても木が重なり合うことがないという精密な設計に驚く。石のソファーに座っていると、静謐な空気に包まれて動きたくなくなる。
小高い丘に登って木道をたどっていくと、その先に茶室でもありそうな雰囲気。
簡素な東屋でしばし休息。現実の自然に身を置くと「水庭」の印象が強烈で、超現実世界のように思えてくる。
「水庭」を案内してくれた大田原さん。二期倶楽部から移ってきたので横沢エリアのことは知り尽くしている。

スイートヴィラの設計は坂 茂氏

北山ひとみさんは二期倶楽部時代に建築家・渡辺 明、インテリアデザイナー・杉本貴志、同・テレンス・コンランなど10数名のクリエイターと協働している。今また、石上純也という多数の受賞歴を持つ話題の建築家に「水庭」の設計を依頼。さらに、スイートヴィラの建設では紙菅やコンテナを利用した建築で知られ、“建築のノーベル賞”と言われるプリツカー建築賞受賞の国際的な建築家・坂 茂(ばん しげる)氏を起用している。「坂さんは災害支援活動が認められて、日本人で初めてマザー・テレサ社会正義賞を受賞した尊敬すべき建築家です。21世紀を生きる上で大切なメッセージを共に伝えていきたいです、とお願いしました」と北山さん。坂 茂氏が初めて挑む宿泊施設は2020年の完成予定。きっと「リ・ソート」するのにふさわしいに違いない。今から楽しみだ。

坂 茂氏自筆の「スウィートヴィラ」デザインスケッチ。片流れ屋根の構造で、知にこだわる本棚「燦架」も組み込まれている。
植栽の位置まで示しているところをみると、専用の庭へのこだわりも強そうだ。

こちらはCGによるパース図。すぐ近くをせせらぎが流れ、外に向かって開かれたバスルームが大きな開放感を感じさせる。(画像提供:株式会社タカラレーベン)

北山ひとみさんが主宰する東京・千鳥ヶ淵のライブラリーカフェ「ギャラリー冊(さつ)」では、ゲストを招いて定期的にセミナーやトークショーなども行われている。

●アートビオトープ那須への問い合わせ
Tel.0287-78-7833
https://www.artbiotop.jp
●読者プレゼントのお知らせ
読者プレゼントにエントリーいただいた方の中から抽選で1名様に、「アートビオトープ那須」のペア宿泊券(朝食付き)をプレゼントいたします。

〈詳細〉
ペア宿泊券:朝食付き
宿泊券有効期間:2020年1月〜2020年6月
宿泊券使用除外日:詳しくは予約時にホテルへお問い合わせください。

エントリー期間:2019年10月17日(木)〜2019年11月25日(月)

※応募資格:エントリー期間中に、セゾンカードを1,000円(税込)以上ご利用いただいた方。
※当選者の発表は、賞品の発送(2019年12月中)をもってかえさせていただきます。
※(株)クレディセゾンが実施するほかのキャンペーンとの重複当選はございません。

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